2021 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of the pharmacophore model of antiprion compounds for development of a novel therapeutic agent
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20H04285
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
石川 岳志 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80505909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 大輔 福岡大学, 薬学部, 教授 (10432973)
水田 賢志 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (50717618)
鎌足 雄司 岐阜大学, 糖鎖生命コア研究所, 助教 (70342772)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プリオン病 / ドッキング計算 / 分子動力学計算 / ファーマコフォアモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
プリオン病は、正常型プリオンタンパク質が異常型プリオンタンパク質へと構造変換することで発症する致死性の神経変性疾患である。申請者らはこれまで、複数の抗プリオン化合物を発見してきたが、最終的に十分な治療効果を有する化合物を得るには至らなかった。本研究の目的は、抗プリオン効果を生み出す「ファーマコフォアモデル」を特定し、より効果の高い抗プリオン化合物を創出することである。 2020年度は申請者独自のアイディアである「制限付きドッキング計算」を利用したファーマコフォアモデルの構築を試みたが、明確なモデルの構築には至らなかった。我々はその主要な理由を、ドッキング計算では標的タンパク質の構造変化が考慮されていないことであると考え、2021年度はタンパク質の構造変化を考慮できる分子動力学(MD)計算に基づいた新たな計算手法の開発に時間を費やした。 我々の新たな手法では、化合物を標的タンパク質から離れた初期位置に配置し、高温でMD計算を実行する。化合物が標的タンパク質に接近し安定な結合構造を形成できれば、高温であってもその位置に長時間滞在し、そうでなければ短時間で離れてしまう。したがって、このようなMD計算を様々な初期位置で実行し、標的タンパク質と化合物の接触時間を解析することで、各化合物の結合能力を推測できると期待される。2021年度の終了段階で、研究代表者の石川はこのようなMD計算を自動的に行うためのプログラムを完成させた。 また、分担研究者の水田は計算から推測されるファーマコフォアモデルに従った化合物を合成するための新規な有機反応の開発を進め、石橋は抗プリオン効果を検証するためのアッセイ系の立ち上げを行った。さらに、構造生物学が専門の鎌足は、α-synucleinによるヒトプリオンの凝集制御機構の研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階では申請者独自のアイディアである「制限付きドッキング計算」を利用してファーマコフォアモデルの構築を行う予定であった。しかし2020年度に行った検証で、抗プリオン活性が測定されている96化合物とドッキング計算との相関が予想よりも低かったため、分子動力学(MD)計算に基づいた新たな計算手法の開発することにした。 この手法では、タンパク質から離れた様々な位置に低分子を配置し、高温でのMD計算を実行することで、化合物とタンパク質の結合構造と親和性の高さを評価する。ドッキング計算を利用した場合との最も大きな違いは、標的タンパク質の構造変化を考慮できることであり、2020年度の上記の研究結果から、構造変化を考慮することが信頼のおけるファーマコフォアモデルの構築に重要であると考えている。本年度は、GROMACSと呼ばれる標準的なMD計算のためのソフトウエアを用いて、上記のMD計算を自動的に実行するプログラムを完成させた。また計算結果から化合物と標的タンパク質のコンタクトをアミノ酸ごとに解析するプログラムを完成させた。 ドッキング計算を利用する計画からMD計算を利用する計画に変更したものの、ファーマコフォアモデルの構築という最も主要な研究計画には変更はなく、新たな抗プリオン化合物の開発へ向けて順調に進展していると考えている。また、標的タンパク質の構造変化を考慮することは、化学シャペロンとしての機能評価にも利用できるため、結合親和性のみを評価するこれまでの計算手法から、大きく進展することも期待される。さらに三名の分担研究者も、抗プリオン化合物の開発に寄与する研究を進めていることから、本年度の進捗を「おおむね順調に進展している」と評価できると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な目的は、臨床試験への移行に足る高い抗プリオン活性を有した治療薬候補を発見することであるが、そのためには抗プリオン効果を生み出すより本質的なファーマコフォアモデルを決定し、論理的根拠に基づいた化合物開発を進める必要がある。そこでまずは、計算化学の専門家である研究代表者が中心となり、構造生物学・有機合成・生物アッセイの専門家である分担研究者と協力して信頼のおけるファーマコフォアモデルの決定法の確立をめざしているところである。 2021年度までの研究で、ファーマコフォアモデルの構築に大きく貢献する分子動力学(MD)計算に基づいた新たな計算手法を考案し、その計算を自動的に行うためのプログラムを完成させた。我々が考案した手法は、化合物を標的タンパク質から離れた様々な初期位置に配置し高温でのMD計算を実行することで、標的タンパク質の構造変化を考慮したドッキング計算を可能とするものである。そこで2022年度は、適切な初期位置の数と温度の設定を検討し、決定された条件下で複数の抗プリオン化合物に関して本手法を適用する。また、標的タンパク質との結合の特徴を化合物ごとに調べるため、得られたトラジェクトリーからアミノ酸ごとにコンタクト数を解析するプログラムを作成する。さらに抗プリオン化合物を開発する場合は、単に標的に強く結合するだけではなく、構造変換を制御する「化学シャペロン」としての機能が重要になる。そこで標的タンパク質の構造変化を考慮するという上記の手法の特徴を活かし、化学シャペロンとしての機能を評価する方法を検討したいと考えている。
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Research Products
(49 results)