2020 Fiscal Year Annual Research Report
両極の氷床コアと全球気候植生モデルによる過去1万年のメタン濃度の変動要因の解明
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20H04327
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
大藪 幾美 国立極地研究所, 研究教育系, 特任研究員 (20758396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 賢二 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (90431478)
青木 周司 東北大学, 理学研究科, 学術研究員 (00183129)
森本 真司 東北大学, 理学研究科, 教授 (30270424)
阿部 彩子 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (30272537)
吉森 正和 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (20466874)
大石 龍太 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (90436600)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メタン / 氷床コア / 完新世 / グリーンランド |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はグリーンランドのNEEM氷床コアから、過去1万年間のメタン濃度のほか、合計8成分(CH4濃度, N2O濃度, CO2濃度, δ15N-N2, δ18O-O2, O2/N2, Ar/N2, 空気含有量)の大気組成データの取得を進めた。グリーランドの氷床コアに共通して、完新世の多くの期間に相当する深度帯は、割れやクラックが多く氷の質が悪いという特徴がある(ブリットルゾーンと呼ばれる)。微小なクラックに現在大気が混入したりすることで汚染が発生しやすく、先行研究においてブリットルゾーンではメタン濃度を高精度で分析することが難しいという問題点があった。本研究で用いたNEEM氷床コアも600 -1300m深(約2500-10000万年前)がブリットルゾーンに該当し、氷の質が極めて悪い試料が散見されたが、セラミックナイフを用いて丁寧にクラックを除去したり、真空引き時間を海外の研究機関の6倍の長さにするなどの工夫を凝らすことで、ブリットルゾーンにおいても汚染の影響を低減した質の高いメタン濃度の測定に成功した。ガスクロマトグラフによる分析については、試料容器交換時にわずかに混入する大気を完全に排除するための真空排気装置を新たに設置し、試料導入箇所の真空度を高めた。これらの工夫により、メタン濃度を3ppb(1σ)という高精度で安定して取得することに成功した。また、東北大学において、国立極地研究所で使用しているガスクロマトグラフ用標準ガス(CH4, N2O, CO2)の濃度を東北大学の温室効果ガス測定装置で分析し、標準ガス濃度スケールの相互検定を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
約80年間隔で、グリーンランドのNEEM氷床コアからCH4濃度, N2O濃度, CO2濃度, δ15N-N2, δ18O-O2, δO2/N2, δAr/N2, 空気含有量のデータを取得し、NEEMコアの測定目標数の約2/3の分析を終えることができた。クラックや割れが多く現在大気の混入による汚染の影響を受けやすい試料が散見されたが、セラミックナイフを用いて微小なクラックを丁寧に除去し、真空排気の時間を長くすることで、汚染の影響を低減させた質の高いCH4濃度の取得に成功した。また、CH4濃度を含む温室効果ガス濃度を測定するガスクロマトグラフには、試料導入箇所に新たに真空排気装置を設置し、当該箇所の真空度を高めた。これらの工夫により、CH4濃度を3ppb(1σ)という高精度で安定して取得することに成功した。また、東北大学において、国立極地研究所で使用しているガスクロマトグラフ用標準ガス(CH4, N2O, CO2)の濃度を東北大学の温室効果ガス測定装置で分析し、東北大学と国立極地研究所の濃度スケールの整合性が取れていることを確かめた。
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Strategy for Future Research Activity |
丁寧な氷試料の処理を継続し、2020年度に引き続きNEEM氷床コアの分析を進め、メタン濃度をはじめとする気体組成のデータを取得する。また、南北差を明らかにするために、南極ドームふじ氷床コアの気体分析にも着手し、データを取得する。データが蓄積された後には、メタン濃度の南北差を正確に計算するため、両極コアの年代軸を一致させる。そのため、完新世の年代が最も正確である南極WAIS Divideコアに両コアの年代軸を統合する。メタン濃度の南北差の高精度推定や、ボックスモデルによる解析などにより、完新世のメタン濃度の変動要因を考察する。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] Fractionation of O2/N2 and Ar/N2 in polar ice cores during bubble formation, bubble-clathrate transition, and gas loss during storage from precise gas measurements of the Dome Fuji ice core, Antarctica2020
Author(s)
Ikumi Oyabu, Kenji Kawamura, Kyotaro Kitamura, Shuji Fujita, Tsutomu Uchida, Jeffrey P. Severinghaus, Jacob Morgan, Motohiro Hirabayashi
Organizer
The 11th Symposium on Polar Science
Int'l Joint Research
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[Presentation] Searching for very old ice with continuous stratigraphy at Larsen Blue Ice Area, East Antarctica2020
Author(s)
Giyoon Lee, Jinho Ahn, Hyuntae Joo, Florian Ritterbusch, Ikumi Oyabu, Songyi Kim, Kenji Kawamura, Zheng-Tian Lu, Sangyoung Han, Sambit Ghosh, Youngchul Han, Sangbeom Hong, Chang Hee Han, Soon Do Hur
Organizer
AGU Fall Meeting 2020
Int'l Joint Research