2020 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト細胞のDNA損傷トレランスの分子機構と細胞レベルの機能の解析
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20H04335
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
益谷 央豪 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40241252)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 損傷乗り越えDNA複製 / ユビキチン化 / PCNA / DNAポリメラーゼ・イータ |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は、ゲノム上に未修復のDNA損傷を残したまま、DNA複製を継続して完了する機構を備えている。この機構は、DNA損傷トレランスと総称され、複数のメカニズムがあると考えられている。ヒト細胞においては、DNAポリメラーゼ・イータによる損傷乗り越えDNA複製が重要な役割を担うが、加えて、未同定の機構が存在する。本計画では、その全体像の解明を目指し、本年度は以下を実施した。 DNA損傷トレランスの制御には、RAD18によるPCNAのユビキチン化が重要な役割を担う。ヒト細胞のDNA損傷トレランスにおいて、中心的な役割を担うDNAポリメラーゼ・イータは、2つのPCNA相互作用領域と1つのユビキチン相互作用領域を持つことが報告されていた。しかし、2つのPCNA相互作用領域を変異させてもPCNAとの相互作用は完全には損なわれず、その意義は不明瞭であった。我々は、さらに第3のPCNA相互作用領域を同定した。本エンドは、その解析を継続し、3つのPCNA相互作用領域の全てが、それぞれに弱くPCNAと相互作用することによって、損傷乗り越えDNA複製の繊細な制御がなされていることを明らかにした。 ヒトDNAポリメラーゼ・イータは、RAD18とも直接相互作用することが報告されているが、従来の報告にある領域だけでは、両者の相互作用の意義を明確にすることができていない。そこで、他の領域が相互作用に関わる可能性を含めて、新たな相互作用領域の同定を進めている。 ヒト細胞には、PCNAのユビキチン化に依存するが、DNAポリメラーゼ・イータが関与しない経路が存在する。本年度は、その経路に関わる因子の探索をすすめている。一次スクリーニングにより、複数の候補分子を得ることができ、個々に再確認の作業が必要となったため、年度を繰り越しての解析となったが、再現性良く関与を検出できる分子を絞り込むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DNAポリメラーゼ・イータによる損傷乗り越えDNA合成の制御に関しては、ユビキチン化PCNA及びRAD18との相互作用の解析がおおむね順調に進んでいる。未同定のDNA損傷トレランスに関する解析は、一次スクリーニングで得られた複数の候補分子の検証に時間を要したため、年度をまたぐこととなったため、当初の予定よりやや遅れているが、再現性良く関与が検出できる分子を絞り込むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAポリメラーゼ・イータによる損傷乗り越えDNA合成の制御に関しては、PCNAとの3つの相互作用領域を不活性化した変異体に加えて、コンセンサス配列に置換して相互作用を強化した変異体を用いた解析を実施する。また、RAD18との新規相互作用領域の同定を進めて、その相互作用変異体の解析へ展開する。未同定のDNA損傷トレランスに関わる候補分子については、個々の機能解析を進める。
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