周産期化学物質曝露による脳機能障害の発症機序の解明と障害の予防・抑制法の開発

2021 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 20H04339
• Research Institution: Hirosaki University
• Principal Investigator: 宮崎 航 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (90512278)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 野見山 桂 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (30512686) ; 中西 剛 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (50303988) ; 配島 旭 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (70555672)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: エピゲノム / 脳発達 / 環境化学物質 / miRNA

Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、周産期化学物質曝露により引き起こされる成長後の脳機能異常の発生メカニズムの解明である。目的達成に向け、本年度は②成長後の脳機能異常につながる素因の発生時期と保持、それに伴う遺伝子・タンパク発現と表現型の変化への影響の検証について、in vitro, in vivo研究を行った。
エピゲノム変化による遺伝子発現への影響について、特に遺伝子発現に関わるプロモーター領域でのエピゲノム変化に着目して研究を進めたところ、小脳発達に関連する遺伝子の発現変化を認めた。また、miRNAについても同様の検討を行い、やはり小脳発達に関連する遺伝子への影響を認めた。
このことから、モデル化学物質をペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物（PFAS）ならびにポリ臭化ジフェニルエーテル（PBDE）として化学物質ばく露モデルマウス作成し、胎児期、新生児期、離乳期、成長後（9-10週齢）における小脳での各miRNAの発現量比較および標的遺伝子の網羅解析を行い、現在miRNAと遺伝子発現との関連について検証を進めている。また、モデルマウスと野生型マウスの行動解析（運動協調試験（運動学習）、物体再認試験（記憶）、位置再認試験（学習））を行うため、同様にモデルマウスを作成し、行動解析に向けての準備を進めている。なお、動物実験については、分担研究者のみならず、研究代表者の施設においても推進することとし、行動解析にかかる設備・プロトコールの確認を行った。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

研究計画において挙げている、主に細胞ならびにこれまでに採取していた動物組織の解析については順調に進んでいる。一方、新型コロナウイルス感染症蔓延による研究制限の影響から、特に化学物質を曝露した実験動物の作成ならびに行動実験が遅れている。

Strategy for Future Research Activity

進捗に記載の通り、新たに化学物質曝露動物の作成が遅れているため、本年度は実験動物の解析を中心に進めていく。
曝露する環境化学物質はペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物（PFAS）類に変更し、計画していたPBDEと合わせて用いている。
上記の化学物質曝露動物と野生型マウスの行動解析（運動協調試験（運動学習）、物体再認試験（記憶）、位置再認試験（学習））についても、研究分担者のみならず、研究代表者の施設においても推進することとし、研究の遅れを取り戻すことを予定している。一方、脳機能とエピゲノム変化、miRNA発現との相関の検証を進めているものの、標的となりうる遺伝子、miRNA、エピゲノム領域が多いため、一定数に絞り込んで関連性の検証を行っているものの、まだまだ有意な結果を得ることができていない。これまでに進められていない高速液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いてメタボローム解析も含め、さらに研究を加速させ、最終的に、脳機能とエピゲノム、miRNA、遺伝子発現、メタボロームのそれぞれのつながりを一つのマップとして提示することを目指す。ここまでの研究成果については、積極的に発表を行う。