2020 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム解析技術を用いたエストロゲンシグナルカスケードの解明
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20H04343
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
木山 亮一 九州産業大学, 生命科学部, 教授 (00240739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
礒部 信一郎 九州産業大学, 生命科学部, 教授 (80435099)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 内分泌かく乱物質 / シグナル伝達 / バイオテクノロジー / 遺伝子発現 / 天然化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、女性ホルモンであるエストロゲンに類似した活性を有する化学物質の影響評価を細胞レベルで行うために必要なエストロゲンシグナルカスケードの全体像を解明し、さらに、そのカスケードに関与するシグナルタンパク質について細胞機能を明らかにし、さらに様々な化学物質の影響評価に利用するための基礎を構築することを目的とする。そのために、本研究では最新のゲノム解析技術のうちRNA-seq法とゲノム編集技術を利用し、エストロゲン受容体をノックアウトした細胞を作製してRNA-seq法により様々な天然化合物や合成化合物に対する遺伝子発現解析を行う。さらに、得られた情報をより複雑な天然及び合成化合物を用いて検証することで、化学物質のリスク評価だけでなく、創薬や食品などの応用に関する知見も得る。本年度は計画の初年度として次に示す項目を実施した。 (1)遺伝子発現プロファイル解析によるエストロゲンシグナルカスケードの解析:本項目では、緑茶の成分であるカテキンなどのフラボノイドやショウガの成分であるジンゲロールやショウガオールなどについてエストロゲン活性に関する情報をまとめ、また、それらの化合物に関してRNA-seq解析を行った。成果を論文及び学会発表として公表した。 (2)ゲノム編集技術を利用したエストロゲンシグナルカスケードの検証:本項目ではエストロゲン受容体をノックアウトしたMCF-7細胞を作成するためにゲノム編集ベクターの作成を開始した。 (3)エストロゲンシグナルカスケードの解析による新規エストロゲン応答タンパク質の探索:本項目では(1)項のRNA-seq解析をもとに新規エストロゲン応答遺伝子を選択し、その機能解析を開始した。 (4)天然及び合成化合物を用いたエストロゲンシグナルカスケードの検証:本項目ではショウガの成分に関して市販されていない化合物の合成を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、「研究実績の概要」の項で記したように、RNA-seq法とゲノム編集技術を利用してこれまでにエストロゲン活性が報告されている天然化合物や合成化合物に関してヒトの細胞を用いた遺伝子発現解析を行い、さらにエストロゲン受容体をノックアウトした細胞を用いてRNA-seq法により遺伝子発現解析を行うことでエストロゲン受容体との関わりについて明らかにする予定である。さらに、得られた情報をもとにより複雑な天然及び合成化合物に関して検証することで、創薬や食品への応用の可能性を探求する。本研究課題の進捗状況については、それぞれの項目について以下のように実施しており、研究成果は適宜報告している。したがって、おおむね順調に進展している。また、特に重大な問題は生じていない。 (1)遺伝子発現プロファイル解析によるエストロゲンシグナルカスケードの解析:本項目では緑茶の成分やショウガの成分についてエストロゲン活性に関する情報をまとめ論文として発表した。また、それらの化合物に関してRNA-seq解析を行い、学会発表を行った。 (2)ゲノム編集技術を利用したエストロゲンシグナルカスケードの検証:本項目ではゲノム編集ベクターの作成を開始しており、成果はまだないが順調に計画は進展している。 (3)エストロゲンシグナルカスケードの解析による新規エストロゲン応答タンパク質の探索:本項目では(1)項の情報をもとに解析を進めており、次年度以降に成果をまとめる予定である。 (4)天然及び合成化合物を用いたエストロゲンシグナルカスケードの検証:本項目は計画通りに化合物の合成を開始し、特に問題は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスにより第一四半期(4~6月)のほとんどの期間について大学が閉鎖されたため、研究計画の「(1)遺伝子発現プロファイル解析」の実施に3か月程度の遅れが生じ、第一四半期(4~6月)の計画がほぼ不可能になることが判明した。そのため、第一四半期に計画した研究に関しては次年度に行うことにした。全体の計画は、当初予期していないことが起こることを前提に余裕をもって計画しており、文献調査などの実施可能な計画を前倒しにするなどの対応を行ったので特段の遅延は生じていない。
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