2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H04355
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
勝見 尚也 石川県立大学, 生物資源環境学部, 講師 (40769767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / 土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は土壌から粒径20~100μmのマイクロプラスチックを抽出する条件を検討し、顕微FT-IRを用いた測定を実施した。 土壌中のマイクロプラスチックに関する既往研究を精査したところ、重液を用いた比重分離が土壌中マイクロプラスチックの抽出に適していることが示された。そのため、我々も比重分離により土壌からマイクロプラスチックの抽出を試みた。まず、本手法の分析精度を評価するため、市販のマイクロビーズをモデルマイクロプラスチックとした添加回収試験を実施した。その結果、モデルマイクロプラスチックの粒径が小さくなるにつれて抽出率が低下し、粒径が100 μm以下では抽出率が60%程度だった。そこで、土壌とマイクロプラスチックの相互作用を低減させることを目的に、重液にカチオン性、アニオン性およびノニオン性界面活性剤や水溶性高分子など様々な化学物質を添加し、抽出率の変化を評価した。スクリーニングの結果、カチオン性界面活性剤あるいはポリビニルピロリドンを添加することで抽出率が90%以上まで向上することが明らかとなった。さらに、土壌から抽出したマイクロプラスチックに過酸化水素処理やフッ化水素処理を行うことで、顕微FT-IRによるマイクロプラスチックの分析を妨害する夾雑物が大幅に減少し、データベースのヒット率が向上した。 顕微FT-IRによるマイクロプラスチックの測定は、液体窒素冷却MCT検出器を用いた透過法を採用し、アパーチャーサイズを50μm×50μm、測定間隔を49μm、測定面積を100 mm2とした。なお、この条件での検出可能な最小粒子径は約30μm、測定時間は2.5時間/試料だった。 本手法を石川県立大学付属農場の水田土壌に適用したところ、粒径56~1200μmのポリプロピレンやABS樹脂などのマイクロプラスチックが検出され、それらの濃度はこれまで報告されている値より高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、土壌中マイクロプラスチックの分析手法を開発することと並行して、マイクロプラスチックを研究する環境を整えることを主眼とした。当初の計画の通り、土壌からマイクロプラスチックを抽出する条件を決定できたことに加え、当研究室で所持している顕微FT-IRに透過測定ユニットを新たに導入することで、より迅速な測定手法を確立できた。また、クリーン環境を整備することで実験作業時の汚染を極力低減することが可能となった。以上の事から、おおむね順調に進展していると判断した。一方、顕微FT-IRによるマイクロプラスチックの同定は既存のデータベースだけでは困難であり、土壌マイクロプラスチックに特化したデータベースの拡充が必要であることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は土地利用形態と土壌マイクロプラスチックの濃度や粒径分布の関係を明らかとするとともに、水田生態系におけるマイクロプラスチックの収支をモニタリングするための準備を進める。また、令和2年度に明らかとなったデータベースの問題を解決するため、できるだけ多種多様なマイクロプラスチックのスペクトルを入手するよう努める。同時に、研究期間の後半に予定している顕微ラマンやSTXMを用いたナノプラスチックの分析についての前準備や予備実験も開始する予定である。
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Research Products
(1 results)