2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H04355
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
勝見 尚也 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40769767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / 顕微FTIR / 土壌 / ナノプラスチック |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は昨年度までに確立した手法を用いて水田土壌におけるマイクロプラスチックの鉛直分布を調査した。 石川県立大学付属実験農場7号水田において土壌断面を作成し、0~50 cmの間を5 cm毎に土壌試料を3点ずつ採取した。採取した土壌は実験室に持ち帰り、凍結乾燥した。土壌中のマイクロプラスチックは昨年度までに確立した手法を用いて定性・定量分析した。 深度別に採取した土壌から検出されたマイクロプラスチックの個数濃度は、0~5 cmで最も高い値を示した。耕盤層(15~20 cm付近)より下では、表層付近と比較して個数濃度が大きく減少した。しかし、深さ50 cmまでも、マイクロプラスチックは一定数確認されたこと、表層から下層に向かうにつれて微小なマイクロプラスチックの割合が増加することから、マイクロプラスチックが土壌断面内を鉛直移動する可能性が示唆された。 マイクロプラスチックの材質の種類を深度別に比較すると0~5 cmが最も多様であった。0~5 cmの表層において顕微FTIRで同定されたポリマーは、ポリエチレンが最も多く(27%)、次いでエチレン酢酸ビニル(16%)、ポリウレタン(15%)、ポリプロピレン(12%)、ポリ塩化ビニル(7%)、ポリエチレンテレフタレート(6%)、ポリスチレン(6%)、ポリアミド(4%)、その他(7%)の順であり、多様な起源が想定された。同定されたマイクロプラスチックの粒子径は20-100μmが64%と最も多く、粒径が大きくなるにつれて個数濃度が減少した。したがって、土壌中マイクロプラスチックの大部分を占める100μm以下の画分を精度よく定量することが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では令和3年度中に土地利用形態と土壌マイクロプラスチック濃度の関係を明らかにする予定だったが、年度内に全ての試料を分析することができなかった。計画していた試料を全て分析することができなかった要因の一つに、試料の前処理の問題がある。有機物含量が極端に多い試料(例えば、森林のリター層)では過酸化水素による有機物の分解が思ったように進まず、黒ボク土では密度分離による鉱物の除去が不十分になるなど、一部の試料で解決しなければならない点が見つかった。これらの課題を令和4年度に解決することで、当初の計画を遂行する。 その一方、令和4年以降に実施する予定であった重金属とマイクロプラスチックの相互作用に関する実験を本年度にスタートさせることができ、バッチ吸着試験やXAFSによる解析によってマイクロプラスチックへの重金属の吸着メカニズムの解明が進むなど、計画以上の進展もあった。本成果に関しては追加で必要な実験を終わらせ次第、国際誌に投稿する予定である。 以上のことを総合的に判断し、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度はまず試料の前処理の問題点を解決することを最優先とする。そのことに併せて、水田におけるマイクロプラスチックの収支を本格的にモニタリングする。これまで被覆肥料に由来するマイクロプラスチックの収支をモニタリングしてきた経験を活かし、それらの手法を応用することで微小なマイクロプラスチックの収支をモニタリングする予定である。また、顕微ラマンやSTXMを用いたナノプラスチックの分析についての前準備や予備実験も令和3年度に引き続き実施する。
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Research Products
(2 results)