2020 Fiscal Year Annual Research Report
固体腐植の細胞外電子供与を利用する酢酸生成微生物の新規な二酸化炭素固定化機構
Project/Area Number |
20H04363
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
片山 新太 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60185808)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 拓哉 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (00833831)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 固体腐植ヒューミン / 非光合成型二酸化炭素固定 / 細胞外電子伝達 / 酢酸生成微生物 / メタン生成微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
非光合成嫌気性微生物である酢酸生成微生物による二酸化炭素から酢酸への還元は、高密度化が可能な点から二酸化炭素固定化技術として有望視されているが、水素供給が不可欠である点が省エネルギー上の課題となってきた。本申請者らは、腐植物質の中で酸アルカリに不溶な固体腐植ヒューミンを唯一の細胞外電子供与体として酢酸生成微生物群による二酸化炭素還元(=酢酸生成)に成功した。過去、外部水素供給無しで酢酸生成微生物が二酸化炭素から酢酸生成した例は知られていない。そこで、この固体腐植ヒューミンを電子供与体とする酢酸生成微生物の細胞外電子伝達と二酸化炭素還元機構を解明することを目的として研究を実施した。 初年度は、固体腐植ヒューミンを電子供与体とする酢酸生成微生物の同定および固体腐植ヒューミンの電気化学的特性解析のためのセル設計を行った。固体腐植ヒューミンを電子供与体とする酢酸生成微生物群としてファーミキューテス門(特に、クロストリジウム目)を主要とする微生物群を集積した。しかし、固体腐植ヒューミンによる酢酸生成促進効果が見られない微生物群も同様の構造を持っていたことから、全体に占める割合が少ない酢酸生成微生物が固体腐植ヒューミンからの電子を利用しているものと考えられた。固体腐植ヒューミン存在下、塩化ナトリウムの濃度を高めると、酢酸生成微生物群には抑制的、メタン生成微生物群には促進的に作用した。電気化学的な評価のために、サイクリックボルタンメトリ測定および電気化学インピーダンススペクトル測定の際に用いる電気化学セルの設計を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度である令和2年度に実施予定の(A)固体腐植ヒューミンを電子供与体とする酢酸生成微生物の集積および(B)固体腐植ヒューミンの電気化学的特性解析のための電気化学セル設計を実施できたため
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究結果から、固体腐植ヒューミンを電子供与体として活性化する酢酸生成微生物は、得られた集積物中に占める割合が小さいことから、分離が難しいことが推定された。そこで、各種酢酸生成微生物を菌株保存機関より購入し、固体腐植ヒューミンを電子供与体として利用できる微生物を探索する。得られた固体腐植ヒューミンからの電子を利用できる酢酸生成微生物を用いて、遺伝子発現解析のための二酸化炭素固定の生化学反応経路の確認および生物電気化学培養系の構築を行う。 また、電気化学セルを用いて固体腐植ヒューミンの電気化学インピーダンス解析やクロノアンペロメトリー解析を行うことによって、固体腐植ヒューミンの電気化学特性を明らかにする。
|