2021 Fiscal Year Annual Research Report
製鋼スラグ中に含まれるリンの選択的分離回収法の開発
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20H04367
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坪内 直人 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90333898)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有価物回収 / 分離精製高純度化 / リサイクル化学 / 資源循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「製鋼スラグ中に含まれるリンの選択的分離回収法の開発」を行う。具体的には、リンの回収を阻害する鉄を塩素化法で事前分離したのち、水蒸気改質により塩化物を酸化物形態に転換し、次いで、脱鉄スラグの炭素還元によりリンのみを選択的に分離回収する技術の開発を行う。特に、塩素化や炭素還元に関わる鉄とリンの揮発挙動、それを制御する因子を解析し、反応機構を解明する。 令和3年度は、塩素化処理後の脱鉄スラグの水蒸気改質による塩化物の酸化物への転換技術の確立に重点を置いた。本研究の最大の目的は、製鋼スラグからのリンの選択的分離回収であり、他の元素の揮発は望ましくない。一方、本研究者らは、これまで「塩化揮発法によるDy含有NdFeB磁石からの希土類元素の分離回収技術の開発」に取り組み、①磁石中のFeは塩化鉄として低温から揮発すること、②分離回収した塩化鉄種をH2O/N2気流中で加熱すると300℃の低温から酸化鉄に変化することを明らかにしている。つまり、水蒸気処理は塩化物の酸化物への転換法として非常に有効であった。そこで、塩素化残渣のH2O改質を種々の条件で詳細に検討したところ、50%H2O・420ml/min・5℃/min・200~1000℃・0minの操作条件下では、Clは温度が200℃を超えると放出され始め、除去率は600℃では20%程度であったが、800℃では90%前後に上り、1000℃ではほぼ100%に達することが明らかとなった。つまり、塩化物を効率よく酸化物形態に転換することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、上述したように塩素処理後の脱鉄スラグの水蒸気改質による塩化物の酸化物への転換技術の確立に取り組み、その結果、50%H2O・420ml/min・5℃/min・1000℃・0minの条件下においては、Cl除去率はほぼ100%に達することを明らかにした。このように、本研究は順調に進展しており、令和3年度に掲げた目標を充分に達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、水蒸気改質を施した脱鉄スラグの炭素還元によるリンの高効率回収法の開発に取り組む。炭素源には粉末コークスとCOガス、加熱には既設の固定床反応装置を使用する。実験では、水蒸気改質後の脱鉄スラグならびに粉コークスを添加した混合物をガス組成(O2/N2やCO/O2/N2中のO2分圧を変化)、炭素混合比(スラグ/コークス=0.1~0.9)、昇温速度(5~30℃/min)、保持時間(0~120min)等をパラメータとして変化させ目的温度(500~1500℃)まで加熱する。加熱残渣の化学組成と存在形態はICPやXRD等で分析してリンの揮発率を明らかにするとともに、炭素ソース(炭素構造の異なるコークスとCO)や脱鉄スラグの物理化学特性(細孔性状や化学組成など)がリンの炭素還元揮発速度に与える影響を定量的に評価し、最適条件と反応機構を特定する。また、反応器出口のインピンジャーやトラップ溶液に含まれるリンの濃度と形態をイオンクロマトグラフやラマン分光法で分析し、リンの揮発形態と回収率を明らかにする。これらの研究は、炭素還元時のエネルギー消費を低減するためにはリンの迅速還元が必要であり、最適条件の明確化と還元剤(炭素源)/スラグ中共存元素の影響の解明が重要であることから詳細に行う。 最終的には、3年間の研究成果を総合し、リンの選択的分離回収に基づく製鋼スラグ資源化技術の開発原理を確立する。
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Research Products
(4 results)