2022 Fiscal Year Annual Research Report
山岳生態系の100年スケールの植生変化を左右する生物学的背景の解明
Project/Area Number |
20H04380
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
松井 哲哉 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (20414493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 銃江 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10343807)
小黒 芳生 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50845063)
佐々木 雄大 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (60550077)
黒川 紘子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70515733)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 植生変化 / 昭和初期 / 山岳生態系 / 植生機能タイプ / 湿原 / 植生調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
昭和初期(1930年前後)に全国規模で行われた国有天然林の植生調査記録(手書き・未発表)が森林総合研究所の倉庫内で多数発見された。その中でも、青森県の十和田八幡平国立公園(当時は十和田八甲田国立公園)で1933年(昭和8年)に行われた調査は、地域内の全ての植生機能タイプを網羅する形で調査が行われ、各地点で出現種のアバンダンス(優占度)が数段階のカテゴリカルデータで記録してある大変利用価値の高いものであった。そこで本研究は、昭和初期の植生調査資料を用い、100年スケールの植生変化とその解明に挑むために、将来的に気候変動の影響を受けやすい日本の山岳生態系を対象とし、景観を構成する森林や湿原での変化を一体的に扱い、「山岳域の自然植生は景観レベルや種レベルでどのように変化してきたのか?」、「その変化は植生機能タイプや植物種、そして環境条件にどのように左右されるか?」について明らかにすることを目的とした。 本年は、1933年に調査された過去の湿原プロットを再調査した。その結果、景観全体にわたって、木本類と非湿原生育種が増加していることが示された。この結果は、地球温暖化が加速した過去100年の間に、湿原における木本類と非湿原生育種の増加といった植生変化が起こった点で注目に値する。木本種と非湿原生育種の拡大は、地球温暖化のもとで生育期間が延長され、春の雪解け時期が早まったことによる泥炭の乾燥が原因である可能性がある。本研究の結果は調査プロットの再配置誤差、観察者バイアス、調査期間バイアスなど、再サンプリング誤差の潜在的な原因を十分に考慮したため、過去プロットの再調査に関する不確実性に対して頑健であり、湿原植物群落の長期的変化に関する信頼できる証拠を提供しうる。本研究は、山岳湿原における地球環境変動の影響に関する新たな知見を提供する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルス感染症による調査時期の遅延はあったものの、当初の計画どおり野外調査と資料の解析および、電子化を遂行した。以上のことから、課題全体としては、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当初の研究計画のとおりに推進する予定であり、昨年度に引き続いて植生調査と植生図の比較解析を行う予定である。変更あるいは研究を遂行する上での問題点は見当たらない。
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Research Products
(4 results)