2020 Fiscal Year Annual Research Report
Microbial processes regulating carbon/nitrogen cycling and methane release in unfertilized paddies
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20H04382
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉山 修一 弘前大学, 農学生命科学部, 客員研究員 (00154500)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メタンガス / 地球温暖化 / 水田 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)CO2に比べ強力な温室効果をもつメタンは水田が主要な放出源の一つとなっており,今後の温暖化防止のためにその削減が緊急の課題となっている。これまでの水田からのメタン放出量測定は,時間と労力がかかる方法が用いられてきたため,広範囲の水田からのメタン放出量のデータはあまり蓄積されてこなかった。しかし,数年前に,米国で水田から直接メタン放出量を直接計測できる機器が発売され,短時間(15分程度)でメタン測定が可能になった。そこで,本研究では,この機器を用いて,日本各地の水田からのメタン放出の実態とメタン放出に関係している要因の解明を試みた。 (2)水田からのメタン放出量はイネの成育にともなって変化するため,今年度の研究では,メタン放出が最大になる出穂期(7月末~9月初)にあわせて,北東北,南東北,新潟,岡山の地理的に異なる水田40カ所においてメタン放出量を現地で測定した。 (3)水田のメタン放出量(単位:mgC/m2/h)は土壌表面とイネ植物体から放出される。古川農試水田では土壌表面からの放出量が5.97に対して,イネからは36.06と7倍多くのメタンが放出されていた。そこで,出穂期のイネ表面からのメタン放出量を40の異なる水田で比較したところ,放出量は最低の0.06から最大の486まで8000倍の差が見られた。 (4)メタン放出量に最も大きな影響を与えたのは,土壌の水分量であった。調査水田間には土壌が乾燥する間断灌漑から常時湛水状態にある水田まで水管理に大きな違いが見られた。常時湛水が行われている水田では放出量は,平均88.9,間断灌水が行われている水田では7.30と10倍以上の差が見られた。 (5)この結果は,出穂期の水管理により水田からのメタン放出量を90%削減することが可能であることを示唆し,日本での水田からの大幅なメタン放出削減の方向性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に起こったコロナウイルスの蔓延による緊急事態宣言がだされ,イネの生育時期に現地に赴き水田のメタン調査が行えなかったため,年度を繰り越して研究を行わざるをえなかった。繰り越し後の2021年には,コロナの市中感染がやや下火になったので,東北地方と新潟県,岡山県水田の現地調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究では,水田からのメタン放出量の実態が明らかとなった。来年度以降は,本研究のもう一つの柱である水田土壌からのメタン放出に関与する微生物の解明に焦点を当てる。その中でも特に,メタン放出に関わるメタン生成菌,メタンを分解するメタン分解菌,窒素固定を行う窒素固定細菌の動態を明らかにし,水田からのメタン放出のメカニズムを炭素と窒素循環に関わる多くの微生物プロセスを通じて解明する。
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