2020 Fiscal Year Annual Research Report
木材利用による炭素排出削減効果の世界モデルの開発と将来予測
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20H04384
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
加用 千裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50550183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 裕泰 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 林業領域, 領域長 (90353622)
恒次 祐子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00360397)
橋本 征二 立命館大学, 理工学部, 教授 (30353543)
野田 龍 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 准教授 (00626955)
古俣 寛隆 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林産試験場, 主査 (00446303)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 木材 / 世界モデル / 炭素貯蔵効果 / 材料代替効果 / 燃料代替効果 / マテリアルフロー・ストック分析 / ライフサイクルアセスメント / 気候変動対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、世界各国における木材のフロー・ストックに関わる炭素貯蔵、材料代替、燃料代替による総合的な炭素排出削減効果を過去から現在まで推計するとともに、その将来予測が可能となるモデルを開発する。この世界各国モデルを用いて、木材利用に関わる多角的な政策シナリオに沿った将来予測を行い、世界各国および世界全体における木材利用による効果的な温暖化対策およびその炭素排出削減ポテンシャルを提示することを目的とする。当該年度は、世界各国における木材による炭素排出削減効果モデルの開発を①~③によって進めた。 ①木材フロー・ストックのモデル化:世界各国共通の木材フローのデータとして、国連食糧農業機関(FAO)から丸太、製材、木質パネル、紙、木質燃料等の生産量・貿易量の過去(1961~2019年)のデータを国ごとに収集した。 ②炭素貯蔵効果の推計とモデル化:炭素貯蔵効果の推計に不可欠な木材のストック量を推定する際の核となる寿命関数を検討した。また、各木材製品の半減期や木材量から炭素量への換算係数の各データを収集した。 ①②の成果をもとに、オーストリアのウィーン天然資源・生命科学大学の研究者とともに、複数の方法・データを用いて世界各国における木材の炭素貯蔵量を過去から現在まで推計し、その成果を国際学術雑誌に論文投稿済みである。 ③材料・燃料代替効果の推計とモデル化:材料代替では、木材(製材・木質パネル・その他)・紙による鉄鋼・セメント・プラスチック製品等との代替、燃料代替では、木質燃料(薪炭・チップ・ペレット)による化石燃料(石炭・石油・天然ガス)との代替を対象とし、被代替材料・燃料の選定を進めた。同時に、被代替材料・燃料の世界各国の生産量・貿易量、生産に伴う炭素排出量原単位(LCI)データを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画していた(1)世界各国における木材による炭素排出削減効果モデルの開発①木材フロー・ストックのモデル化、②炭素貯蔵効果の推計とモデル化、③材料・燃料代替効果の推計とモデル化のうち、①および②は計画をほぼ達成し、研究成果を国際学術雑誌へ国際共著論文として投稿済みで現在査読中であるため、順調に進展していると判断した。一方、③は多くの非木材材料・燃料から被代替材料・燃料を選定し、それらの各国の生産量・貿易量データを収集する作業量は膨大で、次年度も引き続き継続する必要があると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)世界各国における木材による炭素排出削減効果モデルの開発 ①木材フロー・ストックのモデル化:前年度に収集した世界各国の木材フローデータおよび寿命関数を用いて木材ストック量および廃棄木材発生量を推定し、将来予測が可能な木材フロー・ストックモデルを開発する。②炭素貯蔵効果の推計とモデル化:①で開発するモデルのストック量および前年度に収集した炭素換算係数によって、世界各国における木材の炭素貯蔵量とその年変化を炭素貯蔵効果として推計する。それらを定式化し、モデル上に本機能を構築する。③材料・燃料代替効果の推計とモデル化:前年度に引き続き、被代替材料・燃料の生産量・貿易量およびライフサイクルインベントリデータの収集を継続する。これらと前年度に収集した世界各国の木材(材料・燃料)消費量(生産量+輸入量-輸出量)を用いて、材料・燃料代替に伴う炭素排出削減効果を推計する。それらを定式化し、モデル上に本機能を構築する。 (2)モデルの適用による将来予測と木材利用による効果的な温暖化対策の提示 ①木材政策動向・目標の把握と政策シナリオの決定:主要国における木材利用の動向や中長期目標を踏まえて、積極的な材料利用、積極的な燃料利用、木材製品の長寿命化、木材・紙製品の再利用率の向上、森林保全による木材利用減少といった複数の政策シナリオを検討する。②木材の生産量・貿易量・消費量の将来予測:各国における人口とGDPの過去のデータおよび将来推定値を収集する。過去の実績値をもとに人口、GDPと木材消費量の増減関係を明らかにするとともに、過去の木材製品生産量と丸太消費量の関係をもとに、投入産出比の変動傾向を求める。
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Research Products
(11 results)