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2021 Fiscal Year Annual Research Report

SDGs and Sustainable Authoritarianism

Research Project

Project/Area Number 20H04402
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

玉田 芳史  京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 相沢 伸広  九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10432080)
上田 知亮  東洋大学, 法学部, 准教授 (20402943)
河原 祐馬  岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (50234109)
木村 幹  神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (50253290)
鈴木 絢女  同志社大学, 法学部, 教授 (60610227)
滝田 豪  京都産業大学, 法学部, 教授 (80368406)
中西 嘉宏  京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (80452366)
日下 渉  名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80536590)
Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
KeywordsSDGs / 権威主義体制 / COVID-19
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、SDGsと民主化の関係の解明である。非民主的な政権であっても、国際舞台でSDGsへの献身のアピールに成功すれば、国際社会から賛辞を送られ、国内での自己正当化に利用しうる。権威主義体制がSDGsを熱心に推進する理由はそこにあろう。SDGsは開発のみならず、権威主義も持続可能にしうる。本研究は、アジア諸国の具体例に基づいて、SDGsのそうした副作用を察知し、SDGsが健全に推進されることを目指す。
2020年から世界中で流行したCOVID-19は、その克服がSDGsの達成にとっては不可欠であり、その感染拡大阻止やワクチンの調達が各国にとって急務の課題となった。COVID-19は国民の生死に関わるため、対策の成否は各国の政府への評価に直結する。それゆえに、本年度もCOVID-19を注視しながら、SDGsと民主化の関係について研究を進めた。
COVID-19対策は、民主主義にとって危険をはらんでいることを確認できた。第1に、WHO(世界保健機関)に代表される国際機関は、COVID-19封じ込めという結果を重視して、権威主義体制をも好意的に評価することがある。実際に、WHOは2020年11月に、COVID-19封じ込めの模範例としてタイを賞賛した。また、世界各国の健康危機対処能力を示すGHS指数で、タイは2019年には世界6位であったものが21年には5位へと順位をあげた。第2に、政府は感染拡大阻止を大義名分とすれば、国民の政治的自由を制限しやすい。これはCOVID-19がはらむ民主化にとって深刻な問題である。第3に、COVID-19は権威主義体制の強化に加えて、国民の弱体化も招く。COVID-19は国民を健康への懸念や不安ゆえに萎縮させ、権威主義体制に挑戦する力を国民からそぎ落とす。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

COVID-19の感染状況が改善せず、前年度同様に研究対象国での調査ができなかった。そこで引き続き、COVID-19に軸足をおいて研究を実施した。それによって、COVID-19が民主化にとって危険であることがますます明らかになった。タイでは、2020年に始まった若者主体の反政府運動は2021年にも活発に続けられた。
タイで反政府運動が盛り上がったのは、政府が一方では政治集会を規制しつつ、他方ではワクチンの調達に不手際があったからである。感染拡大に伴って、国民がワクチン接種を切望する中、政権は2020年に締結した調達契約の遵守に拘泥した。国王所有の会社(Siam Bioscience /SBS)がアストラゼネカ社のワクチンを、政府から補助を受けつつ、タイで製造し、政府が買い上げて摂取するという段取りになっていた。しかしながら、2021年4月に感染の新たな大波が押し寄せたとき、SBSはワクチンをまだ供給できなかった。このため、政府は中国からワクチンを調達して摂取した。国民の間では効果が高いと伝えられるmRNAワクチン(ファイザーとモデルナ)を求める声が高まったにもかかわらず、政府は応じようとしなかった。政府が両社のmRNAワクチンの調達に乗り出すのは、SBSによるワクチン供給量が需要に追いつかないことを確認した2021年7月以後のことであった。
このため、政府はワクチンの調達や供給にあたって、国民の健康にもまして、君主制の人気や権威に配慮したのではないかという猜疑の目を向けられることになった。そうした疑問を公言した政治家は、不敬罪で訴追されることになった。政権が守ろうとする君主制への隠喩を用いた批判が増えると、不敬罪で摘発されるものが増えた。こうした権威主義化は、2021年2月にクーデタが起きたミャンマーや、習近平が2022年10月に総書記三期目を狙う中国でも顕著に進んだ。

Strategy for Future Research Activity

COVID-19封じ込めに寄与した非常事態宣言には、経済活動とりわけ観光業への打撃ならびに政治的自由への過剰な制限という問題もあった。それにもかかわらず、政権は非常事態宣言を解除しなかった。理由は主眼が反政府勢力の封じ込めにあったからと考えられる。
タイでは、政権が守ろうとしているものが国民よりも君主制であることが判明することによって、君主制への批判が強まることになった。そこで政権は新たな対応を求められることになった。国王中心の権威主義体制を守るために、あるいは君主制そのものを守るために、政権がSDGsをどのように利用するのかを掘り下げていきたい。この点については、SDGs=持続可能な開発目標(sustainable development goals)のうち、持続可能な開発(sustainable development / SD)が、タイの9世王プーミポン(在位1946~2016年)が1997年から唱道する「足るを知る経済」(sufficiency economy philosophy / SEP)と同一であると主張されていることに注目していきたい。国際機関や各国政府がSDGsを推進し、SDを賞賛すれば、それはSEPの賞賛に直結するはずである。平成3年度には、タイの研究協力者の力添えを得て、この点について掘り下げてみたい。
また、平成3年度には京都で第14回国際タイ学会の開催が予定されており、COVID-19をめぐる政治に関するパネルを企画し、平成2年度からの研究成果の一部を公開して議論を深めることを予定している。

  • Research Products

    (19 results)

All 2022 2021

All Journal Article (18 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 3 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 体制転覆判決:国体をめぐる闘争2022

    • Author(s)
      玉田芳史
    • Journal Title

      タイ国情報

      Volume: 56(1) Pages: 1-12

  • [Journal Article] そわつく政権と政党2022

    • Author(s)
      玉田芳史
    • Journal Title

      タイ国情報

      Volume: 56(2) Pages: 1-16

  • [Journal Article] COVID-19と国体危機:タイにおける脱民主化をめぐる攻防2022

    • Author(s)
      玉田芳史
    • Journal Title

      国際情勢紀要

      Volume: 92 Pages: 157-180

  • [Journal Article] ワクチンをめぐる政治2021

    • Author(s)
      玉田芳史
    • Journal Title

      タイ国情報

      Volume: 55(3) Pages: 1-14

  • [Journal Article] ワクチンをめぐる政治(その2)2021

    • Author(s)
      玉田芳史
    • Journal Title

      タイ国情報

      Volume: 55(4) Pages: 1-14

  • [Journal Article] ワクチンをめぐる政治(その3)2021

    • Author(s)
      玉田芳史
    • Journal Title

      タイ国情報

      Volume: 55(5) Pages: 4-20

  • [Journal Article] 政党をめぐる新展開:危ない冒険2021

    • Author(s)
      玉田芳史
    • Journal Title

      タイ国情報

      Volume: 55(6) Pages: 1-15

  • [Journal Article] Rise of ‘Business-Friendly’ Local Elite Rule in the Philippines: How the Valdezes Developed San Nicolas, Ilocos Norte2021

    • Author(s)
      KUSAKA Wataru
    • Journal Title

      Southeast Asian Studies 10(2)

      Volume: 10(2) Pages: 223-252

    • DOI

      10.20495/seas.10.2_223

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] パンデミックとインド州議会選挙:新型コロナウイルス感染症は投票行動を左右したか?2021

    • Author(s)
      上田知亮
    • Journal Title

      東洋法学

      Volume: 65(3) Pages: 45-94

    • DOI

      10.34428/00013229

    • Open Access
  • [Journal Article] ミャンマーの安全保障観と2・1クーデター2021

    • Author(s)
      中西嘉宏
    • Journal Title

      安全保障研究

      Volume: 3(3) Pages: 33-42

  • [Journal Article] ミャンマーは破綻国家になるのか―政変後の混迷と新たな展開2021

    • Author(s)
      中西嘉宏
    • Journal Title

      国際問題

      Volume: 704 Pages: 41-49

  • [Journal Article] クーデターから四ヶ月「革命の曲がり角」2021

    • Author(s)
      中西嘉宏
    • Journal Title

      外交

      Volume: 67 Pages: 112-118

  • [Journal Article] 国軍による弾圧は続くのか? ミャンマー政変四つのシナリオ2021

    • Author(s)
      中西嘉宏
    • Journal Title

      中央公論

      Volume: 135(5) Pages: 142-149

  • [Journal Article] ミャンマー政変 その背景と構造2021

    • Author(s)
      中西嘉宏
    • Journal Title

      世界

      Volume: 943 Pages: 18-22

  • [Journal Article] 呉越同舟の限界・ミャンマーのクーデター : 根深い対立、混乱は長期化の懸念2021

    • Author(s)
      中西嘉宏
    • Journal Title

      外交

      Volume: 66 Pages: 98-103

  • [Journal Article] 乗っ取られたミャンマーの民主主義2021

    • Author(s)
      中西嘉宏
    • Journal Title

      Voice

      Volume: 520 Pages: 134-141

  • [Journal Article] Decolonization and Governmental Parties in Post World War II Era: The Newly Independent States and Decmocratizaion in Perspective2021

    • Author(s)
      KIMURA Kan
    • Journal Title

      Asian Journal of Arts, Humanities and Social Studies

      Volume: 4(2) Pages: 35-47

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] マレーシアの新型コロナウィルス対策にみる国家2021

    • Author(s)
      鈴木絢女
    • Journal Title

      マレーシア研究

      Volume: 10 Pages: 54-58

    • Open Access
  • [Book] 東南アジアと「LGBT」の政治──性的少数者をめぐって何が争われているのか2021

    • Author(s)
      日下渉・青山薫・伊賀司・田村慶子(編著)
    • Total Pages
      388
    • Publisher
      明石書店

URL: 

Published: 2023-12-25  

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