2021 Fiscal Year Annual Research Report
The novel differentiation method in pluripotent stem cells without using gene introduction or cytokine stimulation.
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20H04510
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
出沢 真理 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50272323)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Muse細胞 / 多能性幹細胞 / 貪食 / 分化 / eat-me signal |
Outline of Annual Research Achievements |
1)Muse細胞の貪食に関わる受容体はCD36, beta3-Integrin, CD91, RAGEが主で、マクロファージとは異なる発現が確認された。この4受容体を同時に抑制するsiRNAをMuse細胞に導入し心筋細胞由来の死細胞片を投与すると、Muse細胞の心筋分化が抑制された。脳梗塞モデル梗塞部位に局所投与しても、神経細胞への分化が有意に阻害された。Muse細胞ではモデル細胞(分化細胞)の死細胞片を貪食することで、分化細胞と同じ系統に選択的に分化する機構が示唆された。 2)ヒトMuse細胞に、マウス・ラット由来の心筋細胞(中胚葉系)、神経細胞(外胚葉系)、肝細胞(内胚葉系)由来の死細胞片を貪食させたものと、無処理ヒトMuse細胞とをsingle cell RNA seqで比較した。Muse細胞が貪食によって無処理の状態から大きく離れて分化経路を辿ること、貪食によって系統特異的なマーカーを発現していた。 3)mCherry-GATA-4のfusion蛋白を発現するマウス心筋細胞の死細胞片を貪食すると、Muse細胞の細胞質および核内にmCherry-GATA-4が検出され、ChIP sequenceによってMuse細胞のGATA-4, Nkx2.5等のプロモーターに貪食由来のmCherry-GATA-4が結合していることが示された。 4)心筋、神経細胞の死細胞片を投与し分化させたMuse細胞を Boyden chamberを用いて傷害心筋・神経組織と培養すると機能性マーカーの発現が増強した。 5)ES細胞、iPS細胞は貪食をほとんど示さないことが確認された。Muse細胞では90%以上が貪食するが、ES, iPS細胞では5%以下であり、貪食受容体もRAGEが低く発現するが他の受容体はほとんど発現していなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)Muse細胞の貪食に関わる受容体、2)single cell RNA seqを用いた分化の解析、3)ChIP sequenceを用いた死細胞由来の転写因子がMuse細胞のゲノムに結合し分化を誘導していることの証明、4)Boyden chamberを用いて傷害心筋・神経組織と培養することで機能性マーカーの発現が増強、などは順調に進展している。一方でES細胞、iPS細胞は貪食をほとんど示さないことが確認されたことは、予想外の事実で、実験を計画した当初は見通せないことであった。ES細胞、iPS細胞の本来の素質であり、体に備わっている耐性幹細胞であるMuse細胞とは細胞内メカニズムが大きく異なっていると考えられる。この点をさらに深めるために、次年度は他の体性幹細胞、たとえば間葉系幹細胞や神経幹細胞などを用いた研究に軸足を移すことを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)貪食によるMuse細胞分化の機能性の解析 分化細胞の死細胞片の貪食によってMuse細胞は分化細胞と同じ系列の細胞に分化を開始することがこれまでの研究でわかってきた。そこでどの程度までの分化が貪食によって始動されるのかを解析する。ヒトMuse細胞に、マウス・ラット由来の心筋(中胚葉系)、神経細胞(外胚葉系)、肝細胞(内胚葉系)由来の死細胞片を貪食させて、それぞれの分化マーカーを初期、中期、後期の分化マーカーに分けて発現の有無をqPCR等で検証する。さらに心筋分化、神経分化においては、細胞外のK+濃度を上昇させることによる細胞内Ca2+の上昇をGCaMPを導入したMuse細胞を用いることで検証し、マーカーだけでなく、電気生理学的な機能性がどの程度まで獲得されているのか、などを検証する。 2)single cell RNA seqによって貪食で分化誘導されたMuse細胞が、本来の分化細胞とどの程度類似するかの検証を行う。無処理のMuse細胞、マウス由来の心筋細胞の死細胞片を貪食させたMuse細胞、そしてヒトの心筋細胞株(AC16)の三者を比較検討し、貪食したMuse細胞はどの程度無処理の細胞と異なるのか、またどの程度本来の心筋細胞AC16と類似するのかを調べる。 3)ES, iPS細胞は貪食能がほとんどないため、このシステムによる分化誘導に適していないことがわかった。そこで他の幹細胞、たとえば間葉系幹細胞(MSC)、神経幹細胞(NSC)でMuse細胞と同様に貪食によって分化が新たに誘導されるのか、あるいは分化が増強されるのかを検討する。MSC, NSCでも貪食能があるのかを検証する。次にヒトMSCにマウス・ラットの軟骨細胞・脂肪細胞の死細胞片を、またラットNSCにヒト神経芽細胞の死細胞片を貪食させ、Muse細胞以外の幹細胞でも貪食によって分化するのかを検討する。
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Research Products
(13 results)