2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of mechanism of ischemia-reperfusion injury using heart-, brain-, and kidney-on-a-chips
Project/Area Number |
20H04518
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 賢 岡山大学, 医歯薬学域, 研究准教授 (50432258)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心筋梗塞 / 脳梗塞 / 腎臓移植 / 虚血再灌流障害 / 臓器チップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は「ヒトの心筋梗塞、脳梗塞、および移植時の臓器障害に共通する病態メカニズムは存在するか」を核心をなす学術的な問いとして研究を行なっている。この共通の病態メカニズムに、細胞に発現しているイオンチャネルである一過性受容器電位チャネルサブタイプ M4 (TRPM4)の活動が関与していると仮定している。 昨年度までの研究により、ヒトiPS細胞のTRPM4遺伝子をCRISPR/Cas9によりノックアウトした株の作成に成功した。この細胞を、心筋など様々な細胞に分化誘導することにより、TRPM4チャネルの活動をなくした状態で心筋梗塞、脳梗塞、および移植時の臓器障害に共通する虚血再灌流障害の程度を評価することが可能になる。 心臓チップに関してはヒトiPS由来心筋細胞、線維芽細胞、および血管内皮細胞から成る心臓チップの開発に成功した。具体的には、iPS心筋細胞は自発的な収縮を示し、ノルアドレナリン投与に対し濃度依存的な心拍数の上昇を示した。さらに、ライブイメージングにより心筋細胞内のカルシウムイオンレベルの測定に成功した。その結果、iPS心筋の収縮は不整脈の兆候を示さず同期していることが明らかとなった。 腎臓チップに関しては、近位尿細管細胞と血管内皮細胞から成る腎臓チップを開発した。この腎臓チップでは、生体で生理的に見られる血管側から尿細管側へのグルコースの取り込みが確認された。 これらの成果により、Frontiers in Cardiovascular Medicine誌などで論文6報、欧州心臓病学会などで学会発表9件を行なった(招待講演3件、国際学会2件)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロードマップに掲げた以下の目標を達成したため。 1. TRPM4チャネルをCRISPRノックアウトしたiPS細胞株の確立、2. 心臓チップモデルの確立、3. 心臓チップモデルの組織学的評価(マーカー染色:心筋トロポニンT)、4. 心臓チップモデルの機能的評価(収縮度および心拍数の解析)、5. 腎臓チップモデルの確立、6. 腎臓チップモデルの機能的評価(グルコースおよび尿素窒素の輸送の評価)、7. 臓器チップ上での活性酸素のライブイメージング法の確立
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Strategy for Future Research Activity |
虚血再灌流状態を模擬するため、ヒト心臓チップおよびヒト腎臓チップに対し過酸化水素水投与を行う。またもう一つの模擬条件として、窒素ガスを用いた低酸素・再酸素化処置を行う。これを行うため、インキュベータ内で窒素ガスを充填するためのガスチャンバーと、酸素分圧を測定する装置の開発を行う。両模擬条件に関し、条件最適化を行なう。その後、心臓チップおよび腎臓チップにおいてTRPM4チャネルの阻害薬投与およびTRPM4ノックアウト細胞利用を行うことにより、虚血再灌流障害におけるTRPM4チャネル活動の関与を明らかにする。 また、虚血再灌流状態で発生する活性酸素種(ROS)の発生機構解明のため、ROSイメージングおよび一酸化窒素(NO)イメージングを行う。 さらに、より生体に近い条件で虚血再灌流障害のメカニズムを解明するため、開発した臓器チップに対しヒト血液を灌流するシステムを確立する。そのために、ヒト血液を用いた研究を行うための研究の承認を受けるとともに、ヒト血液を入手するルートを確保する。ヒト血液の灌流においては、血液凝固を防ぐための最適な条件を探索する。
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Research Products
(15 results)