2021 Fiscal Year Annual Research Report
Small diameter synthetic vascular grafts: modification for neointima formation and its patency
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20H04522
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
山岡 哲二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50243126)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小口径人工血管 / 延伸PTFE / 内膜誘導 / ペプチド修飾 / 開存率評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
未だ、実用化されていない小口径人工血管の大動物移植モデルでの開存化を大目標とする。具体的戦略として、我々が世界で初めて報告した脱細胞化小口径血管開発戦略である末梢循環細胞捕捉界面を、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製血管に搭載する。これまでの予備的検討の結果、ePTFEの場合には、初期血栓形成のさらなる抑制と特異的細胞捕捉効率の向上が重要であることが示唆されている。 PTFEは化学的安定性が高く、従来のプラズマ処理後のビニルモノマーグラフト重合法では表面処理が困難であった。そこで2020年までにePTFE(多孔質構造)およびPTFEシートに対してArプラズマ処理後にグリシジルメタクリレート(GMA)をアンカー分子として導入することで、続けてメタクリル酸誘導体モノマーをグラフト重合し、我々が独自に見出した血栓形成抑制性と内膜誘導性を併せもつHCP-1ペプチド(特願2017-014800)を固定化した(Liu et al., Colloids Surf B, 2020)。得られた表面修飾ePTFEサンプルをin vitro HUVEC接着試験および血小板粘着試験、さらに、ミニブタ体外循環モデルによるIn situ 全血接触試験で、血小板粘着抑制と標的細胞捕捉を確認した(Liu et al. Biomaterial Sci. 2021)。R3年度には、さらに反応効率が高い戦略として、Arプラズマ処理後に生じるPTFE上の活性基を光反応性基を有する修飾分子と反応させる戦略を構築させることが出来た。構築した表面上への血小板粘着試験および細胞捕捉試験をin vitroおよびin situ(ミニブタ体外循環モデル)で評価した。未だ、HCP-1ペプチド固定化の効果は十分ではなく、さらなる反応条件の検討によりペプチド固定化密度の向上を計り、その効果をさらに検証する
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、学会発表などに大きな影響があった。特に、大動物実験の例数を重ねることが困難であり、in vitro研究中心の実験遂行を余儀なくされている。その中でも、PTFE(多孔質構造)およびPTFEシートに対してArプラズマ処理後にグリシジルメタクリレート(GMA)をアンカー分子として導入し、続けてメタクリル酸誘導体モノマーをグラフト重合し、我々が独自に見出した血栓形成抑制性と内膜誘導性を併せもつHCP-1ペプチド(特願2017-014800)を固定化することに成功した。R2-3年度には、さらに反応効率が高い戦略として、Arプラズマ処理後に生じるePTFE上の活性基を光反応性基を有する修飾分子と反応させる戦略を構築させることが出来た。ESCA 解析および顕微IR解析によると、その反応効率はこれまでのグリシジルメタクリレートアンカーに比較して飛躍的に向上しており、HCP-1ペプチドの直接固定化も可能と考えられるものであった。得られた表面修飾ePTFEサンプルをin vitro HUVEC接着試験および血小板粘着試験、さらに、ミニブタ対外循環モデルによるIn situ 全血接触試験で、血小板粘着抑制と標的細胞捕捉の検証を始めた。これらの成果は、Y. Liu et al., Colloids Surf B Biointerfaces, 193, 111113 (2020)、および、 Y. Liu et al., Biomater Sci, 9, 1034-1043 (2021) として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、ePTFE表面へのペプチドの固定化効率を向上させるために、アルゴンプラズマ処理に、グリシジルメタクリレートアンカーを固定化し、さらにポリMPC(PMPC)に10%程度マレイミド側やカルボキシル基側鎖を導入したグラフト鎖を重合してペプチド固定化に供してきた。すなわち、ペプチド鎖に導入したシステイン残基や末端アミノ基を利用した固定化を進めてきたが、構築表面のin vitroおよびin vivo評価の結果は必ずしも満足できるものでは無かった。そこで、新たなePTFE修飾反応の検討を重ね、アルゴンプラズマ処理後に導入される活性基が、光反応性基と効率よく結合することを見いだしたために、この反応を主軸として検討を進めることとする。従来のREDVペプチドに加えて、現在特許申請後の審査請求中の新たなペプチド(HCP-1ペプチド)を結合し、全血接触試験、血小板粘着試験およびヒト血管内皮細胞(HUVEC)接着試験をin vitroで評価する。このような独立のin vitro接着試験だけでは、生体内で経時的かつ競争的に進行する現象を予測することは困難であるので、ミニブタ対外循環モデルでのin situ試験を主軸として、生体内で競争的に起こる抗血栓性と内膜再生性を評価する。ESCAおよび顕微IRの評価により、光反応性基による反応効率が大きく向上していることから、上述のPMPCを介したグラフト側鎖反応ではなく、直接ペプチド固定化反応を実施し、さらに、隣接配列の影響やスペーサー構造が活性に大きく影響することが知られているために、これらのペプチド固定化における、末端基の影響、隣接アミノ酸の影響、スペーサーの影響を検討し、In situ 評価系での細胞捕捉効率と血管開存率を評価する。
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Research Products
(6 results)