2022 Fiscal Year Annual Research Report
温度可変固体NMRを用いた両性電解質高分子の脱水制御による凍結保護作用の解明
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20H04532
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松村 和明 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00432328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 文晶 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (00450411)
Rajan Robin 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70848043)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 凍結保存 / 高分子 / 固体NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
これまではカルボキシル化ポリリジン溶液の凍結時の挙動を固体NMRで詳細に解析し、その塩、水、高分子の挙動と凍結保護効果の相関から機序に関して議論を進めてきた。しかし、他の両性電解質高分子でも同様な相関が得られるのかについて調べるため、今年度から、異なる両性電解質高分子溶液を合成して固体NMR測定を行っている。具体的には、カルボキシル化COOHと同様、弱酸弱塩基の両性電解質高分子(PAMPS-APTAC)に加え、強酸強塩基の塩である両性電解質高分子(PDMAEMA-MA)を使用した。その結果、PAMPS-APTACでは凍結保護効果が低いことがわかり、その凍結時の塩の挙動や水分子の挙動がどのように固体NMRに反映されているかを調べた。PAMPS-PATACでは、低温時に塩をトラップする温度域がより低くなっており、凍結による浸透圧脱水作用を調整する作用が弱くなっている可能性がある。今後も引き続き再現性を確認しつつ、機序の解明と一般化を目指して研究を進めていく。 また、低温時における水の粘性増加作用を用いて、氷晶の形成を抑制させることでガラス状態の安定化作用を利用し、スフェロイドなど大きな細胞塊の凍結保存法の開発も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで観測が不可能であった凍結時の水分子、塩、高分子の挙動を測定することが可能となったことから、両性電解質高分子による凍結保護効果の機序を議論することが出来た。この結果をまとめた論文がTOP10%論文となっていることから、研究成果は分野の研究者らから高い評価を受けている。また、カルボキシル化ポリリジンに限らず、他の高分子の測定をすることで機序の一般化を目指しており、この分野では独創性の高い研究を推進している。再生医療用の細胞組織の凍結保存に向けた応用研究にもつながっており、有用性も高い。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、他の両性電解質高分子化合物の固体NMRによる測定を行い、再現性を確認することで、真のメカニズムの解明とその一般化を行い、論文化する。 解明したメカニズムを用いて、再生医療用および生殖医療用または食品用など様々な用途の細胞や組織、材料の効率的凍結保存法を開発し、社会還元を行う。
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Research Products
(14 results)