2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of mechanical and biological effects of oscillating microbubbles on capillary endothelial cells and extravasation
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20H04542
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 信樹 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (30271638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 亮 帝京大学, 薬学部, 教授 (90384784)
松崎 典弥 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00419467)
佐々木 東 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (00754532)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超音波 / 微小気泡 / 薬物送達 / 血液脳関門・血液腫瘍関門開放 / 血管ファントム / 3次元培養 / 高速度・共焦点観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内に投与した薬剤を超音波の照射により血管外の組織に漏出させる超音波薬物送達法では,薬剤とともに投与される微小気泡が超音波の照射下で血管に与える作用を明らかにする必要がある.本年度は主に2つの方法により解明に向けた準備作業を行った. ①血管の物理特性を模擬するゲルファントムの開発 微細径のタングステンワイヤを張った型にアクリルアミドゲルを流し込み,ゲル硬化後にワイヤを引き抜くことにより最小直径約10ミクロンの内腔を有する毛細血管ファントムを作成する技術を開発した.微細管腔への微小気泡導入は,初期的にはゲルからワイヤを引き抜く作業を微小気泡の懸濁液内で行うことにより実現できる.また,ゲルの浸透圧を気泡懸濁液の浸透圧よりも低く設定することにより持続的に管腔内に気泡を引き込む流れが形成できることを発見した.これにより,超音波照射により気泡が壊れても新たな気泡が自動的に導入され,繰り返し実験できるようになった. ②生体の組織構造を模擬する3次元培養細胞血管ファントムの開発 コラーゲンゲルに懸濁した血管内皮細胞(HUVEC)を血管内皮増殖因子(VEGF)を加えた培地内で3次元培養することにより毛細血管ファントムを作成する手法を開発し,安定な作成プロセスを検討した.血管内腔に取り込んだ気泡が超音波照射下で生じるダイナミクスを高速度観察する手法,薬剤の漏出や内皮細胞に生じる損傷を可視化する蛍光観察手法を開発した.さらに,血管内に模擬薬剤を導入し,超音波を照射していない状態での漏出が薬剤の分子量によってどのように変化するかを調べた. さらに,次年度以降に向けた準備作業として,生体内の毛細血管を用いて超音波照射下での気泡のダイナミクスを観察する手法について文献調査を行い,ラットなどの腸間膜を使う手法について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①血管の物理特性を模擬するゲルファントムの開発 ゲルファントム作成手技の開発を完了し,微小気泡の管腔内導入,超音波照射下での気泡ダイナミクスの高速度観察法も確立した.しかし,微小気泡の径のばらつきが大きく,気泡のダイナミクスは気泡径に強く依存するため,照射条件によるダイナミクスの変化を明確に捉えることは困難だった.そこで,同一気泡に異なる音圧の超音波パルスを数マイクロ秒間隔で連続照射し,ダイナミクスの違いを高速度撮影する新観察手法を考案した.この手法により,明確な傾向の評価が可能になり,現在も検討を継続中である.
②3次元培養細胞血管ファントムの開発 HUVECの3次元培養により作成した毛細血管の内腔に微小気泡や模擬薬剤を導入し.薬物漏出特性を調べた.その結果,作成プロセスでVEGFを用いていることから内皮細胞間の結合が腫瘍組織の毛細血管の状態に近く,分子量2 MDa以上の物質でなければ漏出が止まらないため,超音波照射による透過特性の変化を評価するには問題があった.そこで,VEGFを用いない手法としてHUVECと線維芽細胞をフィブリンゲル内で共培養する手法に注目し,作成プロセスを新たに確立した.新プロセスで作成した毛細血管の透過特性を評価したところ,70 kDa以上の物質が漏出しなかったことから,正常組織の毛細血管に近い特性が再現されたと考えている.しかし,新プロセスでは,血管内腔に微小気泡や模擬薬剤を導入するための開口をゲル表面に再現性良く作成することが難しく,いまだ共培養で作成した毛細血管内腔内部での気泡のダイナミクス観察までは至っていない.そのため,本年度の進捗状況はやや遅れているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
①血管の物理特性を模擬するゲルファントムの開発 上述の新観察手法を用いて,種々の超音波の音圧と波形,気泡の種類や寸法 ,密度,管腔直径とゲル硬さなどをパラメータとして管腔内の微小気泡のダイナミクスの高速度観察を行なう.観察を通じて気泡が管腔内壁にどの様な力を加えるのか,内腔に加わる力が超音波の照射条件やゲルの硬さに依存してどのように変化するのかを調べる.さらに,ゲルの変形量から内腔に加わる力を定量する方法を検討し,気泡・超音波条件とゲルの硬さにより血管に加わる力がどのように変化するかを調べる.
②3次元培養細胞血管ファントムの開発 線維芽細胞と内皮細胞の共培養による毛細血管ファントム作成の新プロセスを完成させる.さらに,作成した血管ファントムに導入した微小気泡に超音波照射を行い,気泡ダイナミクス,血管外漏出,内皮細胞損傷の観察を行う.気泡のダイナミクスと血管外漏出,内皮細胞損傷とを関連付けて整理することにより,これらの現象の発生機序を明らかにし,適切な漏出と低損傷を同時に実現する条件を検討する.また,物理的特性が既知のゲルファントム内での気泡ダイナミクスを毛細血管ファントム内と比較し,毛細血管の内皮細胞の機械的特性や,加わる機械的ストレスを推定する. ③生体内顕微観察法:実験動物もしくは実験動物から切り出した新鮮試料に水槽外で超音波を照射できる導波路つき超音波振動子を作成し,実験手法を確立する.これと平行して,実験動物からの生体試料採材の手技,微小気泡や模擬薬剤の導入手法,模擬薬剤の漏れ出しや血管損傷の蛍光染料を用いた評価手法について検討する.
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Research Products
(34 results)