2020 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of multi-element high entropy nano-alloys by non-equilibrium synthesis methods
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20H05623
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北川 宏 京都大学, 理学研究科, 教授 (90234244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 幸大 京都大学, 理学研究科, 特定准教授 (10378870)
草田 康平 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (50741857)
古山 通久 信州大学, 先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所, 教授(特定雇用) (60372306)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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Keywords | 多元素 / ハイエントロピー / ナノ合金 / 触媒 / インフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多元素ハイエントロピー効果により、多くの元素種を固溶化させることで、新しいナノ固溶合金を開発すると共に、革新的な触媒機能の創成を行う。申請代表者が独自に開発した、超臨界ソルボサーマル連続フロー合成法により、多種金属元素を原子レベルで融合させ、新元素、新物質、新材料の探索を徹底的に行う。1)貴金属8元素からなる固溶ナノ合金の作製、2)貴金属-卑金属12元素からなる固溶ナノ合金の作製、3)貴金属-卑金属-軽元素16元素からなる固溶ナノ合金の作製に挑戦する。さらに、プロセス・インフォマティクスの適用により、一気通貫型の革新的プロセス開発を行う。本研究開発により、人間の経験知からでは獲得出来ない、個々の触媒反応に関する「元素の特徴・特性」を機械学習を通して知り得るものと期待される。 本年度は昨年度に続き水熱反応およびソルボサーマル反応を用いた超高速還元連続合成法(ソルボサーマル連続フロー合成法)を適用することで、超臨界・亜臨界における非平衡状態による固溶合金化技術の確立を目指した。ソルボサーマル合成法とは、高温または高圧の溶媒(または超臨界流体)を用いて固体を合成する方法であり、溶媒が水の場合は水熱合成と呼ばれる。昨年度はカーボンや金属酸化物(γ-アルミナやセリア・ジルコニア等)をスラリーとして流せる特殊なスラリー用送液ポンプを導入することにより、固溶ナノ合金作製用スラリー対応型超臨界ソルボサーマル連続フロー装置を開発した。今年度は昨年度に引き続き、これらの開発には、研究分担者の草田が主として担当し、装置の自動化に取り組んだ。また、プロセス・インフォマティクスの手法やプロトコル開発は、昨年度に引き続き、草田と協力しながら、研究分担者の古山が担当した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による材料部品の調達の遅れなどにより繰越が発生し、装置の導入などが多少遅れたが、その他の手法でナノ合金の開発を行ったり、インフォマティクスによるデータ駆動型触媒開発を加速させるため、合成装置の自動化に着手した。既に装置の納品も完了したため、今後の実験データの蓄積は提案時の計画を上回ることが予想される。また、このようなハイスループット合成装置は世界でも例がなく、初の試みであるため学術的にも非常に価値が大きい。さらに、バッチ型合成法による物質開発も並行して進めており、全体として計画の遅延はない。従って、現状では計画に大きな影響はない。 また、物質開発も概ね良好に進展しており、貴金属8 元素多元素ナノ合金の合成に世界で初めて成功した。その結果はJ. Am. Chem. Soc.誌に掲載され、この結果は朝日新聞などの国内新聞誌にも報道された。また、この論文では世界で初めて多元素ナノ合金の電子状態に関して詳細に議論しており、今後の多元素ナノ合金開発において先駆けとなる成果であると考えられる。世界的にも多元素ナノ合金およびその触媒に関する研究が盛んになってきているが、その電子状態を深く議論している研究グループは、現状では我々以外にはない。さらに、多元素ナノ合金の開発を行っている研究グループでは、我々が化学的合成手法に関して世界的に牽引していると言っても過言ではない。また、多元素ナノ合金の熱力学的安定性を予測することは、合成可能性を予測するための基盤となる技術である。これまで、ナノ粒子の熱力学がバルクの熱力学と異なることは理論的に明らかにしてきたが、多大な計算資源と時間を必要としてきた。本研究のこれまでの成果によって、多元素ナノ合金の安定性を高速に予測することがはじめて可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目2「貴金属8元素からなる高エントロピー固溶ナノ合金、貴金属-卑金属12元素からなる高エントロピー固溶ナノ合金、貴金属-卑金属-軽元素16元素からなる高エントロピー固溶ナノ合金の合成」を既に開発した固溶ナノ合金合成用スラリー対応型超臨界ソルボサーマル連続フロー装置などを駆使して行う。貴金属のみではなく、卑金属元素のCu やZn, Ni, Co, Fe との合金作製により、安価な元素で機能を代替する、或いは向上を図る元素戦略的な研究も実施する。 超臨界・亜臨界ソルボサーマル連続フロー合成の本格稼働とともに蓄積されるデータを活用し、開発済みの正則化回帰Elastic netを用いて高活性な触媒の合成条件を探索する。具体的には、合成の条件である元素種、金属塩種、担体種、還元剤、温度、圧力、流速などをインプット・パラメータとし、触媒活性をアウトプット・パラメータとした回帰分析を実施する。多元素ナノ合金の元素の組み合わせは膨大であり、どのような元素を用いるたらよいか探索するため、多元素ナノ合金の第一原理計算データベースを活用した予測に取り組む。
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Research Products
(29 results)