2020 Fiscal Year Annual Research Report
RNA-based Synthetic Life Systems
Project/Area Number |
20H05626
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齊藤 博英 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (20423014)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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Keywords | RNA / RNA-Protein相互作用 / 人工オルガネラ / 人工細胞 / 生命の起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
RNAを基盤とする生命システムが細胞の機能制御に果たす役割の多くは未知のままである。またRNAやRNA-Protein (RNP)相互作用は、生命の進化の過程で本質的な役割を果たしたと考えられるが、それらがいかに細胞や生命のシステムを形成するに至ったのか、その構築原理の解明には至っていない。本研究では、(1)細胞機能を制御するRNP相互作用ネットワークを包括的に同定するとともに、(2)RNPによる細胞内構造物の作動原理を解明し、細胞内で機能する人工RNPを構築する。また、得られた知見を生かして、(3)哺乳類細胞や個体で作用する人工のRNA・RNPシステムを開発する。同時に、(4)生命システムの創発原理の解明を目指し、人工RNA細胞モデルの創出に挑む。 本年度は主に(1)大規模RNA構造ライブラリを活用したRNA/RNP相互作用ネットワークの解明に取り組んだ。様々な生物ゲノムからRNA 構造モチーフを抽出できる独自のアルゴリズムを開発し、RNP相互作用をマイクロアレイ上で包括的に同定できる新技術を確立した。本技術により、これまで大規模解析が困難であったRNA高次構造と相互作用するタンパク質の結合特異性と強度を明らかにすることができた。FORESTはRNA構造と様々な分子の相互作用を大規模に生化学解析可能な幅広いプラットホームとなり、今後RNA構造に関連する基礎研究や創薬開発など、さまざまな領域で活用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に(1)大規模RNA構造ライブラリを活用したRNA/RNP相互作用ネットワークの解明に取り組んだ。様々な生物ゲノムからRNA 構造モチーフを抽出できる独自のアルゴリズムを開発し、RNP相互作用をマイクロアレイ上で包括的に同定できる新技術「FOREST(Folded RNA Element Profiling with Structure library)」の開発に成功した。本技術により、数千-数万種類のRNA構造ライブラリを作成し、 タンパク質との相互作用を生化学的に大規模に解析できる。実際に、これまで大規模解析が困難であったRNA高次構造であるグアニン四重鎖構造の定量に成功し、それらと相互作用する3つのタンパク質の結合特異性と強度を明らかにした。FORESTはRNA構造と様々な分子の相互作用を大規模に生化学解析可能な幅広いプラットホームとなり、今後RNA構造に関連する基礎研究や創薬開発など、さまざまな領域で活用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
RNP相互作用ネットワークの解明では、RNA高次構造に特異的に結合する低分子の解析、及びRNP相互作用を阻害する低分子のスクリーニングを実施する。これにより、相互作用を制御する低分子候補を取得し、今後のRNA-タンパク質の相互作用の解析や、細胞内のRNPネットワークの制御に活用する。 RNPオルガネラの構築原理の解明については、RNA-タンパク質による人工細胞内構造のうち、特に人工RNPグラニュールの構築とその構築原理の解明にフォーカスして研究を実施する。まず、現在既に構築に成功しているRNA結合タンパク質を含むグラニュールが、RNA結合タンパク質の性質と内在性RNAとの相互作用により、どのような影響を受けるのか解明する。また、結合価数や結合力、三次元構造を明確に規定しデザインされた人工RNA/タンパク質を用いた完全人工RNPを構築することで、デザインとRNPの性質の関係を明らかにする。同時に、RNPの構築原理の全体像を明らかにするために、様々なRNAモチーフとRNA結合タンパク質を連結したライブラリを構築し、これらを組み合わせることでRNPが形成される条件を網羅的に解析する。これらにより、原始細胞モデルや機能性人工細胞構築時に必要となる人工RNPグラニュールの基本となるアーキテクチャの確立を行う。 機能性人工細胞の設計については、本年度は制御の出力に当たる細胞死や分化の制御をRNAから行う部分を確立する。具体的には、まず、iPS細胞を特定の細胞に分化させ、その際に生じる不要な細胞をRNA回路を用いて死滅させるシステムの構築を行う。また、細胞の初期化に係わるRNAネットワークの解明を行い、そのRNAネットワークを人工RNAを用いて改変することで、効率よく初期化が行えることを示し、RNAにより出力としての細胞制御が可能であることを証明する。
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Research Products
(7 results)