2020 Fiscal Year Annual Research Report
Risk Management of Comprehensive Monetary/Fiscal Policy: From Financial Crises to International Relations and Natural Disasters
Project/Area Number |
20H05633
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上東 貴志 神戸大学, 計算社会科学研究センター, 教授 (30324908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 和雄 神戸大学, 計算社会科学研究センター, 特命教授 (60145654)
C Y.Horioka 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (90173632)
高橋 亘 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (70327675)
北野 重人 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (00362260)
敦賀 貴之 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (40511720)
堀井 亮 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90324855)
関 和広 甲南大学, 知能情報学部, 教授 (30444566)
多湖 淳 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80457035)
小林 照義 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (10387607)
柴本 昌彦 神戸大学, 計算社会科学研究センター, 准教授 (80457118)
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Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 金融・経済政策 / リスクマネジメント / 少子高齢化 / 外国人労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の政府債務残高は、1964年以降、半世紀以上にわたり膨張傾向にあり、本研究応募時において、対GDP比で220%という先進国の中で突出した水準にある。これは、第二次世界大戦末期の水準すら超えており、極めてリスクの高い状況にあると考えられる。現在この債務残高の膨張を支えているのは、日本銀行が継続している広範な緩和政策であり、もはや金融政策と財政政策は表裏一体の関係にある。歴史上、過度の金融緩和はバブルを生み出し、バブル崩壊は金融危機の引き金となっている。さらに、金融危機が拡大し財政破綻に至るパターンも歴史上繰り返されている。 悲劇が繰り返される理由の一つは、バブル崩壊や財政破綻のリスクは直接的には観測できず、そのリスクの存在に関してすら意見が分かれることである。観測できなければ推定すればいいのだが、現在の経済学(特にマクロ経済学の動的確率的一般均衡モデル)における標準的な手法では、社会構造が変化しないこと(定常性)、モデルの解(均衡)の構造も時間とともに変化しないこと(再帰性)が仮定されているため、社会構造が変化しつつある状況でトレンドから大きく逸脱するようなリスクは分析対象になりえないのである。 本研究の目的は、リスクに適切に反応する包括的な金融・財政政策を導出する手法を確立することである。採択内定から1年半程度の限られた研究期間において、38本の論文(ディスカッション・ペーパを含まない)、内英語論文26本、内査読付き論文25本を掲載している。研究代表者・分担者一人あたりとしては、3本以上の論文、2本以上の英語論文、2本以上の英語査読付き論文を掲載したことになる。さらに代表者・分担者全員で48回の学会報告を行っており、一人あたり4回の学会報告を行ったことになる。これらは社会科学系プロジェクトとして極めて顕著な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
採択内定から1年半程度の限られた研究期間において、研究代表者・分担者一人あたり3本以上の論文、2本以上の英語論文、2本以上の英語査読付き論文を掲載しており、さらに4回の学会報告を行っている。これは社会科学系のプロジェクトとして極めて顕著な成果である。 本研究は、先行プロジェクトである基盤研究(S)「包括的な金融・財政政策のリスクマネジメント:理論・実証・シミュレーション」(2015~2019年度)を発展させたものであり、先行プロジェクトの延長線上にある研究は極めて順調に進んでいる。 さらに、先行プロジェクトの単純な延長線上にはない研究において、当初予見していなかった大きな成果をあげている。特に、個別プロジェクト「景気ウォッチャー調査による機械学習・期待形成メカニズムの分析」で開発したAIにより、国際政治リスクを予測できる可能性がある。現在進行中のウクライナ危機により、国際関係リスクはこれまでにないレベルで注目されており、この方向の研究を追求することで、大きな社会インパクトに繋がる成果が期待できる。 他にも、先行プロジェクトの単純な延長線上にない個別プロジェクト「AIによる将来を予測する経済主体(エージェント)のモデル化」、「少子高齢化と社会保障に関する実証分析」、「外国人労働者・移民の影響に関する実証分析」等において着実な分析結果を得ており、採択内定から1年半程の限られた期間において、期待以上の成果をあげている。 また、2022年度中に、経済学におけるエージェントベースモデルに関して国際的に高度な実績を持つ外国人研究協力者と、神戸大学において半年間に渡り共同研究を実施する予定である。それにより、本研究のコアとなる大規模経済モデルについても大きな成果が期待できる。 以上の理由により、当初の想定を超える研究の進展があり、期待以上の成果が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における具体的な個別プロジェクトは以下のとおりである。 ①理論:AIによる将来を予測する経済主体のモデル化 ②理論:現実的な人口構成を明示的に取り入れたモデル構築・分析 ③理論:国際モデルにおける貿易不均衡・貿易戦争リスクの分析 ④理論:リスクに適切に反応する政策導出のための最適化問題の分析 ⑤実証:少子高齢化と社会保障に関する実証分析 ⑥実証:外国人労働者・移民の影響に関する実証分析 ⑦実証:都道府県・市町村レベルのデータによるリスク及び政策効果分析 ⑧実証:国際関係リスクに関するオンライン・サーベイ実験 ⑨実証:リスク推定のためのテキストデータベース構築 ⑩実証:景気ウォッチャー調査による機械学習・期待形成メカニズムの分析 ⑪実証:理論モデルに基づくリスク推定 ⑫SN:金融・銀行間ネットワークモデルにおけるシステミック・リスク分析 ⑬SN:金融・銀行間ネットワークモデルのシミュレーション・実証分析 ⑭SN:理論モデルのシミュレーション分析 ⑮全体:包括的な金融・財政政策の導出 ⑯全体:国内向けシンポジウム開催 ⑰全体:国際シンポジウム開催 ⑱全体:Journal of Computational Social Science 特集号 ⑲全体:International Journal of Economic Theory 特集号 ⑳全体:政策提言 (21)新型コロナウイルス感染症に関する理論・実証分析 2022年度は、当初の研究計画どおり、個別プロジェクト①~⑩、⑫~⑭、及び(21)を継続する。さらに、⑪と⑮のプロジェクトを新たに開始し、年度内に⑰の国際シンポジウムを開催する予定である。2023年度以降は、継続中の個別プロジェクトを順次完了し、各個別プロジェクトで得られた技術と結果を上記の個別プロジェクト⑭で構築するエージェントベースモデルに組み込む。
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Research Products
(26 results)