2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Innovative Molecular Transformations from Molecular Dinitrogen Using Super-Catalysts
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20H05671
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西林 仁昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40282579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉澤 一成 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (30273486)
坂田 健 東邦大学, 薬学部, 教授 (90328922)
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Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | アンモニア / モリブデン / レニウム / クロム / ヒドラジン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究代表者らは、ごく最近に常温常圧の極めて温和な反応条件下で、窒素ガスから水をプロトン源に用いて触媒的にアンモニアを高効率に合成する手法の開発にごく最近に成功した。これまでに開発した一連の触媒を超える「超触媒」の開発とこれを利用した反応性が極めて低い窒素分子の革新的な分子変換反応の開発を行うことが本研究の主目的である。同時に、アンモニアからエネルギーを取り出す方法の開発に該当するアンモニアの触媒的分解反応の開発にも取り組む。得られる研究成果は、錯体化学や触媒化学などの直接関連する研究分野はもちろん、関連する幅広い研究分野にも大きなインパクトを与えることが期待される。 本年度は3つの研究課題の内、研究課題1について報告する。 研究課題1:従来の触媒能を凌駕し実用化可能な超触媒の開発 理論計算で得られた成果を実験系にフィードバックすることで、典型的なトリフルオロメチル基(CF3基)を持つPCP型ピンサー配位子を有するモリブデン錯体を設計・合成した。対応するモリブデン錯体の触媒能を詳細に検討したところ、置換基を持たないPCP型ピンサー配位子を持つモリブデン錯体の触媒能と比べて、一桁以上高い触媒活性(触媒当たりアンモニア生成量は60000当量に到達)を達成すると共に、反応速度も7倍程度にまで飛躍的に向上する(1分間当たりのアンモニア生成量は800当量に到達)ことを明らかにした。達成した触媒活性は研究代表者らが過去に報告した世界最高値を更に大きく凌駕するものである。また、モリブデン以外の遷移金属を用いた触媒的窒素固定反応にも大きな進展が見られた。特に、モリブデンと同族のクロム錯体やモリブデンの隣族のレニウム錯体が触媒的アンモニアおよびヒドラジン生成反応において有効な触媒として働くことを明らかにした。両反応ともに世界初の成功例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗は、研究申請書で提案した研究計画に従って、当初の予定通り順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題1および研究課題2について、次年度以降に検討予定の項目を抜粋して説明する。 研究課題1:従来の触媒能を凌駕し実用化可能な超触媒の開発: これまでの研究成果を踏まえて、更なる高活性な触媒能が期待できる触媒の提案をDFT理論計算により吉澤研究室(九州大学)で検討したところ、CF3基よりもより強い電子求引性基として働くことが期待されるペンタフルオロスルファニル基(SF5基)をPCP型ピンサー配位子への導入したモリブデン錯体やPCP型ピンサー配位子内での共役系を拡張してLUMOのエネルギー順位を低下させることで反応性の向上が期待されるフェニル基(Ph基)や電子求引性基が存在するアリール基(3,5-(CF3)2C6H3基)の導入したPCP型ピンサー配位子を有するモリブデン錯体が提案された。こちらの理論計算による新規な配位子設計の提案を基にして、実際に該当するPCP型ピンサー配位子を有するモリブデン錯体を実際に合成して、それらの触媒活性を検証する予定である。この様に実験結果と理論計算の結果をお互いにフィードバックすることで、更なる研究展開を目指す。 研究課題3:アンモニアの触媒的分解反応の開発: これまでの研究成果を踏まえて、より強固にルテニウムへ配位するフラタジン配位子を理論計算により分子設計することで、提案されたルテニウム錯体を実際に合成し、高活性なフラタジン配位子はピリジン誘導体よりもより強固に中心金属であるルテニウムに配位しており、触媒的アンモニア分解反応における触媒能について検証する予定である。この様に実験結果と理論計算の結果をお互いにフィードバックすることで、更なる研究発展を目指す。
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Research Products
(27 results)