2021 Fiscal Year Annual Research Report
Science of Post-nanocarbons: Structural science of nano π-space
Project/Area Number |
20H05672
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯部 寛之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (30302805)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芥川 智行 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60271631)
|
Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
|
Keywords | ナノカーボン / 有機合成化学 / 物理有機化学 / 巨大分子 / 湾曲π共役 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「ポストナノカーボン科学:ナノπ空間の精密構造科学」と題し,明確・一義な構造を持つ新しいナノカーボン分子を設計・合成し,その特性解明に基づく機能開拓を目指す.「大きく曲がったπ電子系の特性とはなにか?」という根源的な問いに対し,「新分子・新物質創造」によりその解を追い求めることを目的とする.「1. 多様構造の創造」,「2. 基本特性の解明」,「3. 機能性への展開」の3項目を検討項目とし,その三つ巴の研究展開により,「分子性ナノカーボンの科学」を発展させる. 本研究期間では,具体的に以下の成果を挙げた.「1. 多様構造の創造」では,独自の1,3,5-三置換ベンゼン(フェナイン)を構成要素としたナノカーボン分子設計法を展開し,「ダイアモンドの双子」の分子,ピリジン窒素8個とピロール窒素16個をドープしたC552H296N24組成の窒素ドープ型ナノチューブ分子の合成に成功した.また,ナノカーボンのπ電子系に簡便に金属を埋め込む手法として「カップリング反応による金属鋳型多量化による大環状化法(MOMC)」を開発し,金属ドープ型ボウル状ナノカーボンの合成を行なった.これらの分子群をもとに「2. 基本特性の解明」を行なった.窒素ドープ型ナノチューブ分子では,溶媒の極性による発光波長の変化が観測され,ドナー・アクセプターによるCT発光特性をナノチューブに付与できることが分かった.また,金属ドープ型ボウル状ナノカーボンでは金属ドープによる高スピン状態が実現された.「3. 機能性への展開」では,ナノカーボン分子の固体物性に繋がる重要な知見を得た.直径縮小型キラル有限長カーボンナノチューブ分子とかご状回転子アダマンタンの超分子会合体を合成し,その固体サンプルを分析することで,回転周波数1.06 THzにも及ぶ「固体内テラヘルツ回転」現象を明らかとした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響で一部変更があり繰越を行なったものの,主題となる研究項目,「1. 多様構造の創造」,「2. 基本特性の解明」,「3. 機能性への展開」のいずれにおいても,本研究課題の根幹となる「大きく曲がったπ電子系の特性とはなにか?」という問いの答えに近づきうる成果を挙げることができた.中でも,「カップリング反応による金属鋳型多量化による大環状化法(MOMC)」や「固体内テラヘルツ回転」の発見は想定外であり,分子性物質としてナノカーボン科学を理解しようと追求したからこそ産まれてきた成果であると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究全般について大きな変更はせず,引き続き研究を遂行する.本研究課題での主要な項目のうち「1. 多様構造の創造」,「2. 基本特性の解明」については,これまでに確立した独自の「1,3,5-三置換ベンゼン(フェナイン)を構成要素としたナノカーボン分子設計法」を活用することで,構造と物性の相関を明らかにしていく.また,「3. 機能性への展開」の項目についても,「固体内テラヘルツ回転」を示す直径縮小型キラル有限長カーボンナノチューブ分子とかご状回転子アダマンタンの超分子会合体を基盤として物性を探索していく.
|