2020 Fiscal Year Annual Research Report
Innovative energy storage materials based on the peculiar functions realized by isolated molecules/orbitals.
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20H05673
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 淳夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30359690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 將史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20453673)
山田 裕貴 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30598488)
竹中 規雄 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00626525)
西村 真一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 研究員 (00549264)
中井 浩巳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00243056)
大谷 実 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究チーム長 (50334040)
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Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 孤立軌道 / 孤立分子 / 電気化学機能 / 蓄電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
電池のエネルギー密度は、容量と作動電圧の積で決まる。リチウムイオン電池の容量は、過去30年間改良と最適化を続けてきた結果、理論最大値に到達しつつある。しかし、リチウムイオン電池の作動電圧は3.8 V程度に留まっている。従って、更なる高エネルギー密度化の鍵は電池の高作動電圧化が握っているといえる。問題は、リチウム対4.5 V以上の過酷な酸化雰囲気下においては電池が激しく劣化し、長期安定作動が担保できないことである。これを解決するため、電解液と正極活物質の酸化劣化の抑制に着目した研究が主に行われてきた。例えば、フッ素化耐酸性溶媒、正極表面に保護膜を形成する電解液添加剤、正極活物質への異元素ドーピングや特殊コーティングなどが検討されてきたが、有効な効果は得られていない。 本研究では、これまでの高電圧電池開発において見逃されていた第三の重要な阻害因子があると考え、全ての電池構成要素について多角的に綿密な検討を行った。その結果、正極に導電性を与えるため少量添加する炭素導電助剤への電解液中アニオンの挿入により引き起こされる副反応が劣化の主要因であることを明らかにし、電解液中アニオンを孤立配位させることで超5 Vリチウムイオンフルセルの長期安定作動を初めて実現した (S. Ko et al., A. Yamada, Carbon, 2020, 766-771, S. Ko et al., A. Yamada, Joule, 2021, 5 (4), 998-1009)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ルイス塩基性である溶媒分子の、ルイス酸としてのリチウムイオンへの孤立配位は、電子供与を通じての溶媒のHOMOレベルのダウンシフト、ひいては電気化学的酸化安定性を付与することは普遍的傾向である。当然、高電圧正極材料の安定動作と電解液の酸化分解限界電位の高さには相関があると考えられ、実証もされてきた。これに対し、今回検討対象とした電解液組成系列の中に、この一般的傾向と逆の振る舞いを示すものがあった。その原因の精査の結果、酸化分解電位より低電位で発生する、導電助剤として添加しているカーボンへのアニオン挿入が副反応として浮上した。結果的にはこの新たな阻害因子の発見と、その抑制に対してカチオン交換性の被膜生成能力のあるスルホラン溶媒の適用が必須であることを究明したことが、思わぬ形での安定性付与につながった。現状において発表されているリチウムイオン電池システムの中で最高発生電圧を達成するのみならず、その可逆性についても実用域を実現する驚異的な結果であり、最終目標項目の一つ「総合的最適化による5 V級有機系電池構築」を大きく前倒しする形で達成した。当然ながら、関連コミュニティに対しても大きなインパクトを与え、一流エネルギー関連科学誌への掲載(S. Ko et al., A. Yamada, Joule, 2021, 5 (4), 998-1009)、および東京大学からのプレスリリースという形で結実している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、超5 Vリチウムイオン電池の開発を阻害する主要因が、炭素導電助剤への電解液中アニオンの挿入によって引き起こされる黒鉛層破壊と副反応であることを突き止めた。しかし、アニオン挿入の詳細なメカニズムや電解質への依存性は未解明である。そこで今後の研究計画では、アニオンの黒鉛層間への挿入電位を計算してスクリーニングを実施すると共に、大谷研究室との協業を通じてESM-RISM計算を用いて黒鉛層間へのアニオン挿入過程における脱溶媒和(脱カチオン)障壁を評価することで、超5Vリチウムイオン電池の実現に向けた電解質塩選択の設計指針を見出すことを目指す。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] 酸素レドックス反応における巨大電位ヒステリシスの起源2021
Author(s)
川合航右, Xiang-Mei Shi, 竹中規雄, Jeonguk Jang, Benoit Mortemard de Boisse, 土本晃久, 朝倉大輔, 吉川純, 中山将伸, 大久保將史, 山田淳夫
Organizer
第47回固体イオ二クス討論会
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[Presentation] 酸素レドックス反応における巨大電位ヒステリシス2021
Author(s)
川合航右, Xiang-Mei Shi, 竹中規雄, Jeonguk Jang, Benoit Mortemard de Boisse, 土本晃久, 朝倉大輔, 吉川純, 中山将伸, 大久保將史, 山田淳夫
Organizer
第62回電池討論会
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