2021 Fiscal Year Annual Research Report
Innovative energy storage materials based on the peculiar functions realized by isolated molecules/orbitals.
Project/Area Number |
20H05673
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 淳夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30359690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 將史 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20453673)
山田 裕貴 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (30598488)
竹中 規雄 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (00626525)
西村 真一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 主任研究員 (00549264)
中井 浩巳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00243056)
大谷 実 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (50334040)
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Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 液相マーデルングポテンシャル / デバイ・ヒュッケル理論 / 電極電位 / 静電相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は固体・液体凝集系への孤立分子・孤立軌道の高密度導入によってもたらされる未知の機能物性を抽出し最大化することである。その一環として溶媒が孤立する高濃度電解液を中心に探索を行ってきたなかで、金属負極(Li, Znなど)の析出溶解電位が低濃度系に比べてアップシフトする傾向にあることを見出したが、昨年度の研究においてその起源がカチオンの配位子置換に伴うクーロンエネルギー損失であることが機械学習によって分かった。繰越課題においてこの詳細を検討し、古典的分子動力学(MD)計算においても電位シフトを定量的に解釈可能であることがわかった。電位シフトの定量性に関しては希薄系においてのみ成立するデバイ-ヒュッケル理論(1923年)が有名であるが、高濃度系においては高次のイオン間相互作用が無視できないためその理論が適用できなかった。本研究では、紙と鉛筆では不可能であった高濃度系での静電ポテンシャル計算(注目する金属イオンまわりの全クーロン相互作用の足し合わせ)をMDシミュレーションにより実行し、濃度上昇によるクーロンエネルギーの変化分が実験における電位シフト分とよく対応することを確認した。この静電ポテンシャルの概念は固体科学分野においてよく知られたマーデルングポテンシャルと同様であり、同じ凝集系である液体に適用することで、これまで活量係数を用いて現象論的に表されてきた電位シフトを、凝集系での静電ポテンシャルという確固たる物理的意味をもつ事象として説明を与えることに成功した。この重要性に基づき、液相マーデルングポテンシャル(liquid Madelung potential)という概念を提唱するに至った。液相マーデルングポテンシャルは電気化学全般に通ずる普遍的な概念であり、今後この適用可能性を実験理論の両面から検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は機械学習を用いた影響因子解析により、金属負極の析出溶解電位が電解液中における金属イオンの配位状態と直接相関することを見出した。本年度は、昨年度の研究成果をさらに発展させ、配位状態とクーロンエネルギーの関係を分子動力学計算で直接求めることで、電位アップシフトが高濃度化に伴う配位状態の変化に起因したクーロンエネルギー損失として説明可能であることを明らかにした。この液体系に拡張された静電サイトポテンシャル(液相マーデルングポテンシャル)の概念は、蓄電池に限らず一般の電気化学システム全般に応用可能なものであり、他の工学分野への波及効果も期待できる。当研究の最終目的である、高電圧セル動作に向けての極めて重要な基盤的知見が得られたと言え、概ね順調に推移していると判断している。但し、基礎科学進展への寄与という側面からは、100年来の電気化学の未解決問題に明確な回答を与えることに成功しており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
液相マーデルングポテンシャルを考慮した有機系、水系電解液の設計と実験的検証を引き続き行っていく。また、現状では液相マーデルングポテンシャル計算のための分子動力学シミュレーションに古典力場を用いているため、得られる精度が限定的である点が課題である。本年度は、第一原理計算ベースの機械学習力場および分極性力場を適宜活用することで精度のさらなる向上と適用範囲の拡大をはかり、液相マーデルングポテンシャルの概念を一般の電解液系へと広く展開することを目指す。
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Research Products
(8 results)