2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of glycan function by synthetic glycans and glycan remodeling systems and their application to new immunotherapies
Project/Area Number |
20H05675
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
深瀬 浩一 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (80192722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樺山 一哉 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (00399974)
真鍋 良幸 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (00632093)
三善 英知 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20322183)
下山 敦史 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (90625055)
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Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 複合化 / 糖鎖合成 / ワクチン / 免疫 / 核医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、化学的手法と生物学的手法を統合した合成生物学手法により、新たな糖鎖認識分子を明らかにし、炎症や免疫応答における糖鎖の新機能を解明する。次に、以上の基礎研究の成果を、免疫アジュバントの開発、免疫アジュバントと抗原の複合体からなるがんワクチンの開発、炎症性疾患の制御分子としての糖鎖生合成阻害剤の開発、新規ながん免疫療法の開発などの応用展開に結びつける。さらにα線核医学治療などの放射線療法と併用することにより、炎症性腸疾患や膵臓がんなどの難治性疾患の治療法を開発することを目的とする。 1) N-グリカンの免疫制御機構の解析とその利用:本研究では、以下の項目を実施する。1-1)Fut8阻害剤の探索とそれらの分子標的薬化、1-2)T細胞を標的とする炎症性腸疾患治療薬の開発、1-3)デクチン-1を介したコアフコース認識の解析と新規コアフコース認識タンパク質の探索、1-4)糖鎖認識を基盤にした新規ながんの分子標的薬の創製。本年度の特筆すべき成果として、複数の免疫制御性糖鎖の合成を達成した。この際、グローブボックス内でのグリコシル化を行うことで格段に糖鎖合成を効率化できることを見出し、前例のない複雑糖鎖の合成も達成した。今後この糖鎖を用いた免疫制御を進める。 2) 細菌由来複合糖質の免疫制御機構の解析とその利用:本研究では、以下の項目を実施する。2-1)免疫アジュバントの開発、2-2)アジュバント-がん抗原複合体のがんワクチンへの適用。本年は、免疫アジュバントとして有望なリピドAの機能評価を進め、粘膜ワクチンとして優れた性質を持つことを見出した。加えて、アジュバントとがん抗原を組み込んだリポソームワクチン、エンベロープウイルスレプリカワクチンなど、複数の新規ワクチンマテリアルを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の肝は,Fut8阻害剤、N-グリカン、リピドAといった中分子化合物である。そのためには、これらの化合物の安定供給が必須であり、その合成が極めて重要である。一方で、これらの複雑構造を持つ化合物の合成には大きな困難が伴い、時間、労力もかかる。これまでに、それぞれの化合物に関して、その誘導体も含めて、網羅的にかつ量的供給が可能な合成ルートを構築してきた。例えば、N-グリカンに関しては、精密条件下でのスケールアップが可能なマイクロフロー反応を有効に利用し、中間体となるフラグメント(2-4糖構造)を10 g以上のスケールで合成した。本年度は、グローブボックス内でグリコシル化を実施することで、複雑構造糖鎖の合成を大きく効率化できることを見出し、前例のない4分枝シアリル糖鎖の合成を複数達成した。加えて、リピドAに関しても効率的合成法を確立している。本年度、さらに、粘膜ワクチンのアジュバントとして有望な活性を持つリピドAの合成にも成功した。 上記で合成した分子群の生物活性評価も積極的に進めている。Fut8阻害剤に関しては、新たに合成したプロドラッグの機能を調べ、特許申請を進めている。また、合成糖鎖を生細胞表面に提示する手法を確立し、さらに、糖鎖がEVへの膜タンパク質のローディングに及ぼす影響を明らかにした。またリピドAに関しては、ワクチンアジュバントとして有望であることをin vivoでの実験によっても明らかにし、粘膜ワクチンアジュバントとしての実用化を目指している。 加えて,α-線を用いた新規核医学療法に関しても積極的に検討を進めている。複数のα-線標識分子標的薬を合成し、これをマウスに投与し、何れも極めて高い抗がん活性を示した。すでに医師主導治験を開始している化合物に加え、第2、第3の新規薬剤の開発を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
自己と非自己の認識は生体防御の根幹をなすものであり、脊椎動物においては獲得免疫と自然免疫からなる精緻な機構が自己と非自己の認識を担っている。糖鎖は細胞表層を覆っており、さまざまな認識に関与するため、獲得免疫と自然免疫の両方において自己と非自己の認識の鍵物質として機能している。糖鎖は構造上の多様性や不均一性を特徴とし、しばしば複数の活性ユニットを含むため、分子レベルで構造に基づいた生物機能解析は容易ではない。 本研究では、研究対象を自己由来糖鎖にまで拡大し、自己ならびに非自己糖鎖を利用した免疫制御法の開発を目指し、免疫制御機能を有する糖鎖の合成研究と自然免疫受容体や糖鎖認識タンパク質と糖鎖との相互作用解析研究を行う。自己糖鎖としてはアスパラギン結合型糖タンパク質糖鎖( N-グリカン )を、非自己糖鎖としては細菌由来複合糖質を主な対象として、それらの免疫制御機構を解析する。さらに糖鎖を利用した免疫ならびに炎症制御法を開発し、がんならびに炎症性疾患を対象にして、がんワクチンや糖転移酵素阻害剤など、糖鎖を基盤とする免疫制御分子の開発を目指す。 多くの天然糖鎖は、複数の活性ユニットを有することから、それぞれのユニットが同時あるいは経時的に認識イベントに関わることにより、より高次の認識や細胞制御が可能である。合成糖鎖の場合も、活性ユニットを複合化した再構築モデルを用いることで、より高次の機能分子とすることができる。今後は、これまでに合成した糖鎖や複合糖質をさまざまな化合物と複合化するほか、細胞表層への導入も検討する。この糖鎖機能再構築モデルを用いることで、優れた免疫応答を誘導できる実用的がんワクチンや新規ながん標的分子を開発する。加えて、これらの分子の核医学治療への適用も検討し、革新的ニューモダリティー分子を提案する。
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[Presentation] Synthesis and Evaluation of Astatine-211-Labeled Fibroblast Activation Protein Inhibitor (FAPI) for Targeted Alpha Therapy2024
Author(s)
Atsushi Shimoyama, Ayaka Aso, Yuichiro Kadonaga, Yoshifumi Shirakami, Tadashi Watabe, Taku Yoshiya, Masayoshi Mochizuki, Kazuhiro Ooe, Atsuko Kawakami, Naoya Jinno, Atsushi Toyoshima, Hiromitsu Haba, Yang Wang, Jens Cardinale, Frederik L. Giesel, Kazuko Kaneda-Nakashima, Koichi Fukase
Organizer
11th Takeda Science Foundation Symposium on PharmaSciences
Int'l Joint Research
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[Presentation] Preparation and Immunological Evaluation of Nanoparticulate Self-adjuvanting Peptide Vaccines as a Breast Cancer Vaccine Candidates2023
Author(s)
Keita Ito, Yoshiyuki Manabe, Hiroto Furukawa, Hiroshi Inaba, Kazunori Matsuura, Masatoshi Maeki, Manabu Tokeshi, Shino Ohshima, Yoshie Kametani, Kazuya Kabayama, Koichi Fukase
Organizer
13th International Peptide Symposium
Int'l Joint Research
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