2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of DYASIN: Novel Approach to Enantioenriched Chiral Molecules
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20H05677
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
友岡 克彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (70207629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 百合子 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (10211690)
入江 亮 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (70243889)
浅野 周作 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (30827522)
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Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 動的不斉誘起 / 光学活性体 / 動的キラル分子 / 静的キラル分子 / 外的キラル因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の化学・物質科学において,キラル分子を光学活性体として調製することは極めて重要であり,そのために人類はこれまでに数多くの工夫を成してきた.その成果として,「光学分割」と「不斉合成」の二つの手法を開発し,利用してきた.これに対して本研究では,第3の方法としてDYASIN (ダイアシン): dynamic asymmetric induction, 動的不斉誘起法]と称する新手法を開発することを目的としている.DYASINは動的キラル分子の立体化学を外的キラル因子(OCS: outer chiral source,キラルポリマーなど)の影響によって制御しようとするものである.動的キラル分子とOCSの相互作用の大きさはエナンチオマーによって異なるために,熱力学支配で両者の偏りが生じて光学活性な動的キラル分子が得られることになる.この過程は分子内の結合回転で進行し,結合の開裂・形成を含まないので不斉合成ではない.本研究ではまず,様々な動的キラル分子(動的面不斉分子,動的らせん不斉分子,動的軸不斉分子,他)のラセミ体にDYASINを施し,光学活性体とすることを検討している.また,DYASINによって得られた光学活性な動的キラル分子をキラル炭素分子の様な静的キラル分子もしくは準静的キラル分子に立体特異的に変換して多様な不斉合成に展開することを検討している.本研究ではまた,分光学的手法,計算化学的手法に立脚したDYASINの機構研究を実施している.さらに本研究では,DYASINを含む動的キラル分子の立体化学挙動解析に重要なラセミ化速度の測定における問題を解消するためにラセミ化速度を高温,短時間で分析することができる「マイクロフロー分析法」の開発も検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動的らせん不斉を有するラクトンのDYASINについて種々検討したところ,外的キラル因子(OCS)としてセルロース系ポリマーを作用させると(P)体が高い光学純度で定量的に得られることを見出した.DYASINの実験操作はラクトンを有機溶媒に溶かし,それに多糖誘導体ポリマーを加えて攪拌,空気雰囲気下で室温下に放置,その後,濾過するのみと単純である.DYASINはセミグラムスケールで行うこともでき,また,用いたOCSは回収・再利用できることから実用性が高い.なお,DYASINによって光学活性体として得られたラクトンに塩基性条件下,アルコールを作用させることで安定な軸不斉を有するビナフチル分子に立体特異的に誘導することにも成功した.本研究ではまた,動的キラル分子のラセミ化を高温,短時間で分析することができる「マイクロフロー分析法」の開発に成功した.これにより,従来のバッチ分析法とは大きく異なる測定域の分析を簡便に行うことが可能になり,DYASINの条件設定に有益な動的キラル分子の立体化学挙動の情報が容易にかつ高精度に得られる様になった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,下記の4項目について相互に関連付けながら検討を進めていくことを計画している. 1)新規動的キラル分子の設計,合成とそのDYASIN:本研究ではこれまでに動的面不斉ヘテロ中員環分子,動的らせん不斉ラクトンのDYASINに成功している.これらの知見を生かして,今後はより多様な動的キラル分子(動的面不斉分子,動的らせん不斉分子,動的軸不斉分子,他)を設計,合成してそれらのDYASINを検討する.また,キラルケイ素分子のDYASINも検討することを計画している. 2) 外的キラル因子(OCS)の多様性拡大:本研究ではこれまで外的キラル因子として多糖誘導体ポリマーが有効であることを明らかにしている.今後はより多様な天然・非天然キラルポリマーについて検討するとともに動的キラル分子との適合傾向を系統的に解析する計画である. 3) DYASINの効率化と実用化:連続的・効率的なDYASIN法の開発を検討する計画である. 4) DYASINの解析とキラル分子の立体化学制御の学理探求:計算化学的手法,実験的手法に立脚したDYASINの機構研究を実施する.計算化学的手法に関しては研究分担者の青木教授とともにQM法(ab initio/DFT 法)およびElongation法による緻密な機構解析を実施する.また,より巨視的な機構解析を行うために,分子動力学計算の適用を考え,その専門家である森准教授に新しい研究分担者として参画頂き共同研究を実施する予定である.実験的手法に関しては分光学的解析,速度論的解析を実施する予定である.
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Research Products
(6 results)