2022 Fiscal Year Annual Research Report
Genome immunity: elucidation of the antiviral activity of endogenous bornaviruses and their utilization as functional resources
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20H05682
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朝長 啓造 京都大学, 医生物学研究所, 教授 (10301920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Parrish Nicholas 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 理研白眉研究チームリーダー (40833851)
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Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 内在性ウイルス / ボルナウイルス / ゲノム免疫 / 共進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、哺乳動物ゲノムにおいて、抗ウイルス活性を示す内在性ウイルス配列、特にボルナウイルスに由来する内在性ボルナウイルスの特徴と機能の分子機構を解析し、ゲノム免疫の動作原理を解明し、それを利用することを目的としている。本研究課題は、朝長グループ(京都大学)とParrishグループ(理化学研究所)の共同研究で実施している。本年度は、マウスゲノムにおいてウイルス特異的なpiRNA を発現するmmEBLNsの解析を中心に進めた。mmEBLNsの生体内での機能とその配列特異性を明らかにする目的で、昨年度までに作成済みであったマウスゲノムに存在するpiRNAを発現する3か所のmmEBLNs(mmEBLN-3, -4, -5)すべてをノックアウトしたマウス(EBLN-KO)への組換えボルナ病ウイルス(BoDV-1)の接種実験を行った。その結果、EBLN-KOマウスでは、脳内の一部の領域でウイルスの高い複製が観察された。また、コウモリゲノムに内在化しているウイルスRNA 依存性RNA ポリメラーゼ(L)遺伝子由来のeEBLL-1の細胞への影響を探るために、BoDV-1のL遺伝子を恒常発現する293T細胞を作成し、RNA-seq解析により発現上昇および発現低下した遺伝子を抽出した。また、組換えeEBLL-1を用いたメンブレンプロテオームアレイ解析を行った。RNA-seq解析の結果、mRNAの代謝過程、ncRNAの代謝過程、mRNAのポリアデニル化など、RNAプロセシングに関連する遺伝子群が変化していることが示され、BoDV-1 Lの発現が、RNAの成熟や代謝といった宿主RNAの動態を阻害することが明らかとなり、高い相同性を有するeEBLL-1が同様の細胞内機能を持つことが示唆された。これらの成果は、学会発表とともに、現在論文としてまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成目標である「1-1:内在性ボルナウイルスの抗ウイルス活性の解明」に関して順調に成果を上げ、論文発表も行っている。また、「1-2:内在性ボルナウイルスから転写されるRNAの網羅的解析と相互作用」「2-1:内在性ウイルス由来RNAの配列的特徴の解明」に関しても、ノックアウトマウスや網羅的なRNA-seq解析やプロテオーム解析を実施し、内在性ボルナウイルスの新たな機能の可能性を明らかにできている。一方で、「2-2内在性ウイルス配列の転写機構の解明」と達成目標3-1である「RNA配列の改変による抗ウイルス活性の制御」についてはノックアウトマウスの解析に時間がかかっておりやや遅れている。全体的には、達成時期よりも早い進捗もあり、研究は期待以上に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ノックアウトマウスを用いた感染実験を進め、生体内での内在性ボルナウイルスの抗ウイルス作用の詳細を明らかにするとともに、その機序に迫る予定である。加えて、ゲノム内のpiRNAクラスター領域にボルナ病ウイルスのヌクレオプロテイン遺伝を発現するノックインマウスを作製することで、詳細な機能解明と抗ウイルス作用を持つ配列の特定を進める。さらに機能性の内在性ボルナウイルス配列についてその詳細な作用機序を明らかにするために、網羅的なRNA-seq解析やプロテオーム解析を実施し、宿主因子との相互作用に基づく作用機序を明らかにする。
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Research Products
(12 results)