2020 Fiscal Year Annual Research Report
腸内スタフィロコッカス属のスーパー抗原網羅的解析による気管支喘息発症要因の解明
Project/Area Number |
20J00029
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 崇 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 気管支喘息 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目の本期間にはまず申請書に記載した【研究計画1】喘息モデルマウスにおける腸内Staphylococcus種の同定を行いおよび経時的解析を一部変更し行った。その後【研究計画2】腸内Staphylococcus属定着ノトバイオートマウスを用いた腸内Staphylococcus属における喘息モデルマウスへの影響の検討の一部を内容を一部変更し行った。まず、当研究室においてSPF環境下で飼育した野生型B6Jマウスから糞便を経時的に採取し、酵素法を用いた糞便DNA抽出を行った。採取した糞便DNAを次世代シークエンサー(Miseq)を用いた細菌叢塑性解析(16Sアンプリコン解析)を行った。行った菌叢解析データの中でアレルギー性気道炎症を起こしたマウスと陰性コントロールマウスを比較し、糞便Staphylococcus属の中でどのような種がアレルギー性気道炎症下において増加するかを解析した。その結果、Staphylococcus aureusがアレルギー性気道炎症群では有意に上昇していることが明らかとなった。次に腸内Staphylococcus aureusがHDM誘導性アレルギー性気道炎症に対しどのように寄与するかを解析するために、Staphylococcus aureus投与マウスとコントロールマウスにおけるアレルギー性気道炎症の表現系の比較を行った。その結果、Staphylococcus aureus定着マウスでは肺組織における気管支周囲および血管周囲の炎症細胞の浸潤が明らかとなった。以上本研究を実施することにより、腸内Staphylococcus aureus定着が肺組織における炎症の増悪に寄与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の本期間には申請書に記載した【研究計画1】喘息モデルマウスにおける腸内Staphylococcus種の同定および経時的解析および【研究計画2】腸内Staphylococcus属定着ノトバイオートマウスを用いた腸内Staphylococcus属における喘息モデルマウスへの影響の検討を一部内容を変更し行った。本期間においては、次世代シークエンサーを用いた16Sアンプリコン解析や喘息モデルマウスによる解析を組み合わせた実験計画を綿密に遂行することにより、Staphylococcus aureusがアレルギー性気道炎症群では有意に上昇していること、およびStaphylococcus aureus定着マウスでは肺組織における気管支周囲および血管周囲の炎症細胞の浸潤をきたすことを明らかにした。以上本研究を実施することにより、腸内Staphylococcus aureus定着が肺組織における炎症の増悪に寄与することを研究成果として見出すことができた。当初計画した【研究計画1】喘息モデルマウスにおける腸内Staphylococcus種の同定および経時的解析および【研究計画2】腸内Staphylococcus属定着ノトバイオートマウスを用いた腸内Staphylococcus属における喘息モデルマウスへの影響の検討をほぼ遂行することができており、以上の理由からおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は【研究計画2】腸内Staphylococcus属定着ノトバイオートマウスを用いた腸内Staphylococcus属における喘息モデルマウスへの影響の検討の一部および【研究計画3】スーパー抗原の網羅的解析によるHDM誘発性アレルギー性気道炎症に寄与する腸内Staphylococcus属内リガンドの探索および腸管細胞への寄与の検討を行う。【研究計画1】によってアレルギー性気道炎症との相関が明らかとなった腸内Staphylococcus aureusを経口投与することによりStaphylococcus aureus定着マウスを作成する。作成したStaphylococcus aureus定着マウスにおいてHDM誘導性アレルギー性気道炎症モデルマウスを作成する。その後、糞便上清および小腸内容物上清、大腸内容物上清を回収し、既存の同定されているスーパー抗原に相当する配列に対しRT-PCR法を用いて網羅的検出を行う。以上の研究計画をおこなうことによりHDM誘発アレルギー性気道炎 症に寄与する腸内Staphylococcus属内リガンドの探索を行う。次に腸内より取り出した各種免疫細胞に対し【研究計画3】-1によりアレルギー性気道炎症との関連が示唆されたリガンドを投与し、細胞内の各種炎症に関与するサイトカイン、ケモカインを測定し、比較を行う。また腸内の各種細胞において既存の報告によりスーパー抗原に対応するとされている受容体の発現をFACS法もしくはRT-PCR法により評価する。上記実験を行うことによりHDM誘発アレルギー性気道炎症に寄与するスーパー抗原が腸内各細胞へ与える影響を検討できる。
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