2020 Fiscal Year Annual Research Report
高速原子間力顕微鏡で解き明かすリボソームの機能ダイナミクス
Project/Area Number |
20J00036
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
今井 大達 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | リボソーム / 高速AFM / リボソームストーク |
Outline of Annual Research Achievements |
翻訳はリボソーム自身がダイナミックな構造変化を起こしながら様々な翻訳制御因子との結合と解離を繰り返すことで進行する動的な反応である。本研究では生体分子の形状と動きを同時観察できる高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、翻訳反応におけるリボソームの機能ダイナミクスを捉えることを目標とし、(1)高速AFM観察のためのリボソーム試料の固定化方法の検討、(2)リボソームストークの機能ダイナミクス解明、(3)タンパク質合成反応の各ステップの可視化に取り組む。2020年度は主に課題(1)と(2)に関し、次のような新知見が得られた。
(1)高速AFM観察のためのリボソーム試料の固定化方法の検討:高速AFMの走査によってリボソームが破壊されず、かつ基板から解離しないような穏やかな固定化方法を探索した。まず基板上にタマビジン二次元結晶を作製し、そこへリボソームタンパク質を非特異的にビオチン修飾したリボソームを固定した。タマビジン二次元結晶上にリボソームが固定されることを確認こそできたが、高速AFMの走査によりリボソームがタマビジン二次元結晶から解離してしまい、鮮明なイメージング像は得られなかった。その後、実験条件をいくつか検討し、アミノシラン処理によりマイカ基板に正電荷を付与することでリボソームを穏やかな条件で固定できることを見出した。
(2)リボソームストークの機能ダイナミクスの解明:高速AFM観察によりリボソームの柔軟な機能ドメインであるリボソームストークの運動性を、超好熱性古細菌50Sリボソーム上で捉えることに初めて成功し、リボソームストークが少なくとも2状態のコンフォメーションをとることを見出した。また、翻訳伸長因子存在下でストークが2種類の翻訳伸長因子を自身の周囲にかき集めることでそれらの局所濃度を上昇させた翻訳因子プールを形成することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は上述の課題(1)~(3)の解決から、リボソームの機能ダイナミクスに関する高速AFMならではの情報を新たに抽出することを目標にしている。2020年度は主に(1)高速AFM観察のためのリボソーム試料の固定化方法の検討と、(2)リボソームストークの機能ダイナミクスの解明することを計画していた。当初の予定通り、(1)アミノシラン処理によってリボソームを観察基板に穏やかに固定する条件を確立し、(2)これまで検出されていなかったストークの新たなコンフォメーションと、ストークが翻訳因子を集合させたファクタープールの可視化といった、高速AFMならではの視覚的情報を抽出することに成功した。また、これらの成果についてはいくつかの国内学会および国際雑誌で報告を行った。よって、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(1)において、アミノシラン処理によってリボソームをマイカ基板に固定できる条件を2020年度の研究で見出したが、リボソーム以外の分子も比較的固定されてしまうことからその特異性は高くないことがわかる。多くの生体分子(RNAやタンパク質)が混在するなかで翻訳反応の各ステップを高速AFMで可視化するには、観察したい反応系に応じてリボソームの固定化方法をさらに工夫する必要がある。今後はアフィニティータグを導入したリボソームを調製し、なるべくリボソーム以外の分子を基板上から除いた観察系の構築を続ける。構築された観察系を用いて課題(3)を遂行する。課題(3)では、真正細菌の翻訳開始・伸長・終結-リサイクルの各過程を独自に観察する予定である。
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Research Products
(5 results)