2021 Fiscal Year Annual Research Report
デザイン教育における身体感覚の探索を通じた感性開拓の研究
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20J00067
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三好 賢聖 慶應義塾大学, 環境情報学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 身体感覚 / 呼吸 / 運動共感 / デザイン / からだメタ認知 / 環世界 |
Outline of Annual Research Achievements |
特別研究員PD一年目に引き続き、身体感覚の記述や人工物の制作を通じた身体的感性開拓の実験を行った。身体感覚の記述を通じた感覚の探索、受入研究者が「からだメタ認知」と提唱するアプローチを用い、特に呼吸という身体動作の探索を行った。呼吸は私のPhD研究の間から着目していた身体運動のひとつだが、コロナ禍におけるさまざまな生活変化を通じてその重要性を再認識した。呼吸は一日のうちに約二万回から三万回ほど行われる一方、その感覚について意識することは稀である。しかし注意してみれば呼吸は毎回感覚が微妙に異なるうえ、呼吸の仕方を工夫するだけでも身体感覚に大きな変化が生まれることもある。そうした呼吸の質的多様性を探索するなかで、呼吸にまつわる体感が、その瞬間の物理的環境や心理的状況とどのように影響し合うかを詳細に観察する。最終的には身体感覚の探索を基盤とした人工物や環境の設計論の構築を目指している。 からだメタ認知的アプローチでは、さまざまな呼吸を自分で実践するなかで、そこに現れる身体感覚をどのような言葉や非言語的媒体によって形容できるかを探索した。人工物の制作を通じたアプローチにおいては、呼吸を模したアニメーションや物理的に動く機構を複数作成することにより、微妙な視覚的変化によってどのような呼吸動作と感覚が誘発されるかを観察している。 上記の制作実験を通じた研究と並行して、受入研究者の研究室で行われる研究会に継続的に参加し、からだメタ認知を中心とする研究アプローチや概念を実践的に学習した。生物学者ヤーコプ・フォン・ユクスキュルの書籍『生物から見た世界』を読み、環世界や機能環などの概念について学んだ。環境との作用と知覚の連動性について考えることを通じ、個々人のもつ身体が環境に対してどう呼応するか、そしてどのような個人差が存在し、それらが何に由来するのかなどの問いについて、学部生と共に考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までの成果をもとに、引き続き実験と制作を継続したい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに呼吸運動に関する身体感覚の探索、そして人工物の制作を通じた体感の探索が行われたが、今後も諏訪研究室で扱う諸概念や、ユクスキュルの環世界などのコンセプトを通じて研究の発展を目指す。
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