2020 Fiscal Year Annual Research Report
多元環の導来圏と安定性条件による実Grothendieck群の部屋構造
Project/Area Number |
20J00088
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
淺井 聡太 大阪大学, 情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | Grothendieck群 / 標準分解 / 2項準傾複体 / TF同値 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、Kingの安定性条件が定める実Grothendieck群の部屋構造と、通常のGrothendieck群の元のDerksen-Feiの意味での標準分解との関連を、伊山修氏との共同研究で一定程度示すことができた。以前の私の研究で、Baumann-Kamnitzer-Tingleyの数値的ねじれ対を用いて、実Grothendieck群にTF同値という同値関係を導入しており、これは部屋構造と深く関係する。当該年度および繰越期間中に、私たちは、道多元環やE-tame多元環の場合、Grothendieck群の各元について、その標準分解における直和因子たちで張られる錐がTF同値類に一致することを証明した。ここで、E-tame多元環とは、Grothendieck群のすべての元が自分自身と直和可能である有限次元多元環のことであり、tame表現型の多元環はすべてこの性質を満たしている。百合草やBrustle-Smith-Treffingerの先行研究は、各2項前準傾複体の錐がTF同値類であることを示しており、私たちの結果は上記の条件を満たす多元環についてこれを拡張するものである。 さて、2項前準傾複体の錐たちは、一般に実Grothendieck群を覆うとは限らないため、この錐たちが存在しない部分を非rigid領域と呼び、その特定の部分集合として、純非rigid領域という概念を、上記共同研究で導入した。部屋構造およびTF同値類を知るには、非rigid領域や純非rigid領域についての情報が必要である。 私は単独研究において、tame表現型の多元環の代表的なクラスである、特殊双列多元環について、実Grothendieck群の純非rigid領域を組合せ論的に決定するアルゴリズムを、得ることができた。具体的には、特殊双列多元環を与える箙における非零な道に着目し、それらが定める特定の線型不等式により、純非rigid領域が決定されることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度には、上記の研究結果の一部は得られていたものの、それをプレプリントや論文の形で公表することができず、研究が遅れていた。繰越期間中およびその終了直後に、上記の結果を含めたプレプリント2本を公表し、ある程度体系的に結果をまとめることができたため、遅れは解消できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
道多元環やE-tame多元環の場合であっても、実Grothendieck群のTF同値類の中には、通常のGrothendieck群の元を一切含まないものが存在することがあり、そのようなTF同値類は、Derksen-Feiの標準分解からは構成できない。このようなTF同値類を得るための手法を、今後の研究で考えていきたい。 また、非同型な特殊双列多元環について、純非rigid領域は全く同じであるにもかかわらず、部屋構造がかなり異なる例を得ており、この現象をきちんと説明できる理論を得ることも、今後の課題である。
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