2021 Fiscal Year Annual Research Report
アトピー性皮膚炎の新規治療戦略に向けたリンパ球クラスター維持機構の解明
Project/Area Number |
20J00115
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朝比奈 良太 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | レジデントメモリーT細胞 / アトピー性皮膚炎 / インターロイキン7 / リンパ管上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症収束後も末梢組織に留まり、抗原の再曝露に対して迅速に炎症反応を誘導するレジデントメモリーT(Trm)細胞の駐在を制御できれば、ヒトおよびイヌのアトピー性皮膚炎に対する革新的な寛解維持療法を開発できると考えられる。本研究では、上皮由来サイトカインに着目し、CD4+Trm細胞クラスターの維持機構の解明に基づくアトピー性皮膚炎治療における新たな寛解維持戦略の確立を目指す。 これまでに、オボアルブミンによる遅延型過敏症マウスモデルを用いた生体イメージングにより、Trm細胞を可視化できる実験系を確立した。この実験系を用いて、CD4+Trm細胞はクラスターを形成して駐在し、真皮のリンパ管に近接して局在することを明らかにした。さらに、マウス皮膚のシングルセルRNAシーケンシング解析では、リンパ管上皮細胞(LEC)はメモリーT細胞の生存因子であるインターロイキン7(IL-7)を高発現していた。また、IL-7gfpレポーターマウスを用いた解析から、LECが真皮におけるIL-7の主要産生細胞であることを示した。次に、LEC特異的IL-7を欠損させた遺伝子改変マウスではCD4+Trm細胞の数が減少することが明らかになった。また、同マウスでは抗原再曝露により誘導される皮膚炎が減弱した。さらに、IL-7受容体の中和抗体を投与したところ、投与群では対照群に比較してCD4+Trm細胞およびクラスターの数が減少することが明らかになった。 以上より、LEC由来IL-7がCD4+Trm細胞クラスターを維持していることに加えて、新規治療標的となり得ることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスを用いて、リンパ管上皮細胞由来のIL-7がCD4+Trm細胞の皮膚駐在に関わることを実証できた。さらに、 IL-7受容体の中和抗体を用いて、これが治療標的となり得ることを示せた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. IL-7産生LECの遺伝子発現プロファイルの解析 IL-7gfpレポーターマウスを用いた解析から、皮膚にはIL-7陽性LECとIL-7陰性LECが存在した。皮膚でのIL-7陽性LECの遺伝子発現プロファイルの特徴を明らかにするため、IL-7gfpレポーターマウスの皮膚からセルソーターによりIL-7陽性(gfp+)LECとIL-7陰性(gfp-)LECを分離し、RNA-seqを行う。IL-7陽性LECを識別できるマーカーおよびIL-7以外のTrm駐在に関与しうる分子を抽出する。IL-7陽性LECにおけるこれら抽出した分子の発現を、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学で検証する。 2. ヒトやイヌのアトピー性皮膚炎(AD)への応用に向けた解析 ヒトおよびイヌのAD病変部皮膚を用いて、上記で抽出したマーカーによりIL-7陽性LECの局在を明らかにし、CD4+Trm細胞クラスターとの関連性を免疫組織化学により明らかにする。また、イヌおよびヒトのAD治療ではJAK阻害剤が近年使用できるようになったが、IL-7シグナルはJAK1/3を介する。マウスモデルを用いて、JAK阻害剤がCD4+Trm細胞数を減少させ、抗原の再曝露時の炎症を抑制できるかを評価する。
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