2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of morphological evolutionary history of beetle fossils using internal structures and its application to phylogenetics
Project/Area Number |
20J00159
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 周平 北海道大学, 総合博物館, 特別研究員(SPD)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 甲虫目 / ハネカクシ科 / シリホソハネカクシ亜科 / クワガタムシ科 / 化石 / 琥珀 / 系統樹 / 形態進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスの影響も考慮し、在宅ワークで可能な昆虫化石が含まれた琥珀の収集を積極的に行い、研究に値するサンプルを多数入手することができた。予備実験として標本として価値の低い虫入り琥珀15点の破壊的手法を用いた観察の結果、ほとんどの場合、昆虫化石の体内部は空洞もしくは樹脂によって置換されていたものの内部の組織が見当たらない状態であり、残念ながら内部形態を抽出することはできなかった。しかし、共同研究におけるマイクロCTスキャンを用いた調査で、筋肉系だけでなく、神経や脳に至るまで多くの軟組織を三次元モデル化することに成功している。
また、多数の琥珀の昆虫化石の調査の結果、いくつかの未記載種(新種)を発見できた。例えば、エンマムシ科甲虫の未記載種と思われる3種を白亜紀「中期」のミャンマー産琥珀から見出した他、甲虫目ハネカクシ科でもホソヒゲハネカクシ亜科Trichophyinaeで初となる化石を発見し、国際誌に論文を投稿した。さらに、Solierinae亜科で触角が顕著に変形した奇妙な化石を同ミャンマー産琥珀から見出し、この標本についても未記載種と判断して研究を進めることができた。加えて、白亜紀ミャンマー産琥珀から興味深いクワガタムシ入り琥珀を見出し、当該化石との形態比較を行うため、東南アジア諸国を中心とした現生クワガタムシ標本の比較材料の収集を開始した。
本年度最大の論文発表成果は、ハネカクシ科シリホソハネカクシ亜科Tachyporinaeの高次系統と分類に関する包括的なまとめをBiology誌上に公表したことである。今回、現生属をほぼ全て網羅した系統樹を成虫形態を基に作成し、形態の観察結果も踏まえ、これまでとは根本的に異なる新たな分類体系を提唱した。今後は本研究で構築した系統樹に化石の形態情報を直接的に組み込むことで、形態進化史の探索を模索してきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた国内外の調査が行えなくなった。さらに、ロックダウンや共同研究者が新型コロナに感染するなどの影響により、海外の研究者との共同研究にも大きな支障があった。また、受け入れ研究機関である北海道大学でも入室制限などが実施され、研究計画の実施状況にも大きな変更を余儀なくされた。加えて、琥珀サンプルのマイクロCTスキャンを民間企業に委託している最中であるが、新型コロナウイルスの影響もあり、未だに手元に結果が届いていない。来年度はその結果も取り入れながら研究を進めていきたい。そのため、予定していた研究の遅れや一部に関しては実施できなかったものの、査読付き国際誌に単著論文が1編、加えて共著論文が7編出版された。また、筆頭1編、共同筆頭著者1編、責任著者2編を含む6編が投稿中の段階であり、来年度も継続した研究成果の発表が見込まれている。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの影響を踏まえ、次年度以降も海外調査が出来ないことを前提とした研究計画を立てている。まずは令和2年度に行った予備調査の結果を踏まえながら、琥珀化石の破壊的手法を含む形態情報の抽出に取り組む。また、琥珀よりも年代が浅く、化石化の度合いが低いコーパルの溶剤を用いた昆虫化石の直接的な抽出も本格的に行う。さらに民間企業に委託しているマイクロCTスキャンの結果を基に、琥珀に保存されている昆虫化石から網羅的な形態情報を取得する予定である。既に十分な量の琥珀サンプルを確保済みではあるが、より状態の良い昆虫化石が含まれている琥珀を求めて収集を継続していきたい。また、前述のエンマムシやハネカクシ化石などに関する研究をさらに進展させ、論文として積極的に投稿する予定である。とくにクワガタムシ科に関する予備的な研究では、参考資料として入手した現生の膨大な標本中に未記載種と思われる興味深いサンプルが混じっており、化石ではないものの、関連する研究として組み入れたい。
系統解析については、本年度に発表したシリホソハネカクシ亜科の形態形質を基にした系統樹に手持ちの化石サンプルの情報を加えることで、絶滅属(種)の形態進化史に関する知見を増やしていくとともに、より具体的な進化的な考察を行いたいと考えている。手元には狭義のシリホソハネカクシだけでなく、自身の研究で新たな亜科へと格上げしたキノコハネカクシ亜科Mycetoporinae(旧キノコハネカクシ族Mycetoporini)の中生代の琥珀中として初めての化石もあることから、これら2亜科の進化史について洞察を深められると考えている。
新型コロナウイルスの影響下で国際共同研究を行うのは難しい状況が続いているが、比較的影響が小さい中国とオーストラリアとの間で昆虫化石に関する共同研究を複数開始しており、それらの成果も見込まれる。
|
Research Products
(18 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Dasycerine rove beetles: Cretaceous diversification, phylogeny, and historical biogeography2021
Author(s)
Yin, Z.-W., Lu, L., Yamamoto, S., Thayer, M.K., Newton, A.F., Cai, C.-Y.
-
Journal Title
Cladistics
Volume: 37
Pages: 185-210
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-