2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J00170
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
浴野 泰甫 明治大学, 明治大学, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 線虫 / 神経系 / 共食い / 微細構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、捕食性線虫Seinura cavernaにおいて共食い回避を制御する神経細胞を同定することである。S. cavernaを含め、Aphelenchoididae科の神経構造は明らかになっていないため、神経染色剤DiOを用いて神経細胞の蛍光染色および構造理解に努めた。その結果、5対の神経細胞の蛍光染色に成功した。次に、これら神経細胞をレーザーアブレーションシステムで破壊し、共食い行動の観察を行った。しかしながら、捕食性線虫特有の培養の困難さのため、適切な実験系を構築することが困難であった。そこで、同じくAphelenchoididae科に属し、培養が容易なマツノザイセンチュウにおいて、神経構造を理解し、行動解析系を確立することを新たな目的とした。 まず、S. cavernaと同様に、マツノザイセンチュウにおいても神経蛍光染色を試み、4対の神経細胞を染色した。この情報をもとに、微分干渉顕微鏡下で19対の神経細胞の配置を理解した。これら神経細胞を3つのクラスターに分け、クラスターごとに破壊し、行動解析を行った。行動解析は、モデル生物C. elegansの系をもとに、物理刺激応答、化学刺激(1-octanol)応答を評価した。その結果、適切にアッセイを実施でき、C. elegansとは異なる行動制御機構の存在が示唆された。 しかし、微分干渉顕微鏡下では、神経構造の同定や詳細な位置構造の決定は不可能である。そこでマツノザイセンチュウにおいて連続超薄切片の作製し、透過型電子顕微鏡で観察することで、上記問題の克服を試みた。連続超薄切片の作製には高度な技術を要するものの、400枚を超える連続超薄切片の作製に成功した(一部3枚以下の切片の欠損あり)。また、実際に神経細胞の樹状突起の追跡に一部成功し、各神経細胞が属する感覚器官を決定できると考えられる。今後はこの技術をもとに、マツノザイセンチュウ幼虫、雄、雌において神経構造の把握に努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マツノザイセンチュウにおいて、連続超薄切片の作製がおおむね完了した。S. cavernaではなく、マツノザイセンチュウを使用する必要が生じたが、想定の範囲内であり、順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたマツノザイセンチュウの神経構造情報をもとに、神経細胞破壊および行動解析をし、神経細胞の機能解析を行う。その後、その技術を捕食性線虫S. cavernaに応用し、共食い回避に関与する神経細胞の同定を行う。
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