2020 Fiscal Year Annual Research Report
Combinatorial descriptions of crystal bases and applications to the cluster theory
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20J00186
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金久保 有輝 筑波大学, 数理物質系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | アファイン量子群 / 多面体表示 / decoration |
Outline of Annual Research Achievements |
いくつかの古典的アファイン型リー環に対するVerma加群の結晶基底の多面体表示を定義する不等式を、アファイン量子群の表現論で現れるextended Young diagramやYoung wallといった概念を使って組み合わせ論的に記述できることを証明した。多面体表示を定義するためには、添え字の無限列を一つ固定する必要があるが、その無限列が`adapted'という条件を満たすことを仮定した。このことにより、多面体表示を定義する不等式に、表現論的な新たな意味づけを与えることに成功した。古典型リー環に対するVerma加群の結晶基底について、その多面体表示の明示公式を明らかにした論文が、論文誌`Communications in Algebra'に掲載された。この論文の内容については、研究集会`組合せ論的表現論の最近の進展'にて、オンラインでの口頭発表を行った。
また、古典型リー環に対する量子群の既約加群の結晶基底については、その多面体表示を定義する不等式を、長方形タブローの言葉で書き表すことができた。やはり、固定する無限列は`adapted'という条件を満たすことを仮定した。このことにより、既約加群に対応する不等式にも、表現論的な新たな意味づけを与えることができた。この結果をまとめた論文が、論文誌Journal of Algebraに掲載された。
共同研究者のKoshevoy氏、中島氏と、古典群上のdecorationを求めるアルゴリズムを構築することができた。このことにより、考えるリー環が古典型の有限次元単純リー環である場合、adaptedとは限らない任意の無限列に付随する多面体表示を明示的に計算するアルゴリズムを与えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度, 2021年度は、(1)古典的アファイン型のリー環に対するVerma加群の結晶基底の多面体表示を明示的に求めること、(2)古典型リー環、及びuntwistedなアファインA型のリー環に対する既約加群の結晶基底の多面体表示を明示的に求めること、(3)Demazure結晶に対するdecorationを求めることを研究目的にしていた。(1)の課題については達成することができ、結果をまとめて論文誌に投稿することができた。(2)の課題については、古典型リー環の場合に達成することができており、結果をまとめた論文が、論文誌に掲載された。(3)の課題については、古典型リー群上のVerma加群の結晶基底に対するdecorationを計算するアルゴリズムを構築することができた。このdecorationにおいて、いくつかの変数に特殊値を代入することで、Demazure加群の結晶基底の多面体表示を定義する不等式を得ることができる。そのため、少なくとも古典型リー群に対する(3)の課題については、一つの答えを得ることができた。このような状況であることから、本年度の自己評価を「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで考えてきた以外のアファインリー環に設定を変え、Verma加群の結晶基底の多面体表示を定義する不等式を組み合わせ論的に記述することを目指す。現段階で、extended Young diagramやYoung wallといった既存の概念を使って、不等式を記述できると予想している。この予想が正しいことを、中島-Zelevinskyの方法を使って証明する。
既約加群の結晶基底については、リー環が古典的アファイン型の場合を考え、多面体表示を定義する不等式の明示公式を組み合わせ論的に記述することを目指す。具体的な方法としては、中島のアルゴリズムを利用して不等式を計算し、その計算結果を考察しながら、不等式をextended Young diagram、あるいはYoung wallといった既存の組み合わせ論的対象を使って表示することを目指す。受入研究者の佐垣氏からアファインリー環やLSパスに関する意見をいただきながら、研究を進める。
また、共同研究者のKoshevoy氏、中島氏と議論し、古典型以外のリー群上のdecorationを計算するアルゴリズムを求める。リー環の表現論を用いてdecorationの計算を行う。アルゴリズムが複雑になりすぎる場合は、リー群に座標を与えるreduced wordが特別な条件を満たす場合に限定するなどし、そういった場合にdecorationを計算するアルゴリズムを与えられないか検討する。
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