2020 Fiscal Year Annual Research Report
Synthetic ecological analyses on aquatic plant-microbe interactions toward the application in environmental technology
Project/Area Number |
20J00210
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
石澤 秀紘 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 植物ー微生物共生 / 水質浄化 / バイオマス生産 / 種間相互作用 / 合成生態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
水質浄化・資源生産への応用が期待される水生植物であるウキクサの共生細菌群集から、それぞれ代表的な細菌系統に属する6種類の菌株を分離し、無菌化したウキクサに再導入することで、人工的な共生システムである「モデル共生系」を作成した。また、このモデル共生系の群集構造を経時的に評価することで、(1)6菌株が一定の比率を保って50日以上共存可能であり、高い経時的安定性と再現性を持つこと、(2)実際のウキクサ共生細菌群集の構造を科レベルにおいて模擬していること、を確認した。以上のことから、植物共生細菌群集の成立機構を理解する目的において、有用な実験系が確立できたものといえる。 また、モデル共生系を構成する6菌株のうち、全ての2種の組み合わせを無菌状態のウキクサに接種し、その関係性を評価した。その結果、各菌株が単独の場合にウキクサ表面に定着する量と、6種を含むモデル共生系において定着する量との差分が、2種間の関係性によってある程度説明できることが分かった。また、3種以上の菌株間で起こる高次の種間相互作用も、この系の成立に重要な役割を果たすことが示唆された。 以上の成果は、植物共生細菌群集の形成において種間相互作用が果たす役割を網羅的・定量的に示したものである。今後、本成果を発展させることで、共生細菌群集が高度に保存された構造を示すメカニズムの理解や、その制御による栽培効率化技術の確立に貢献することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最重要課題であった、高い安定性・再現性を持つモデル共生系の構築を達成し、当該成果を学術論文として発表することができた。また、この実験系において、種間相互作用と共生細菌群集構造との関係を明確に把握することに成功し、今後、種間相互作用に着目した共生細菌群集の制御技術を開発する上で基盤となる知見を得ることができた。以上のことから、(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析を行うことで、モデル共生系内の種間相互作用について分子レベルでの理解を試みる。まず、構成種となる6菌株について、全ゲノム配列を取得する。また、2種ずつの組み合わせをウキクサに接種した系について遺伝子発現解析を行うことで、各々の種間相互作用のメカニズム(基質の供与、競合、毒性物質の分泌など)を明らかにする。以上の成果から、(1)植物共生細菌群集の内部には、どのようなメカニズムの種間相互作用が存在するか、(2)その中で、どのようなメカニズムを持つ種間相互作用が群集構造の決定に支配的な影響を及ぼすか、を明らかにしたい。併せて、今年度得られた種間相互作用の定量結果については、数理的な解析を加えた上、学会や論文での発表を行う予定である。
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