2021 Fiscal Year Annual Research Report
概日時計が概日である意義:水田ウキクサ開花時期の多様化・局所適応からの実証
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20J00255
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
村中 智明 鹿児島大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 光周性 / 概日リズム / 多様性 / 局所適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
鹿児島の早稲(コシヒカリ、4月から7月)・晩稲(ヒノヒカリ、6月から10月)の水田を対象に、週1回のフィールド調査を行い、アオウキクサの個体数や花成率などを記録した。早稲水田では、4月頭の湛水開始後すぐにアオウキクサの多数の発芽がみられた。5月頃より多くの個体で開花が確認され、7月の収穫期まで開花・結実が続いた。鹿児島の早稲水田では、収穫期が7月中旬と夏至から1ヶ月以内と早いため、短日誘導性では開花が間に合わず、常時開花する系統が選択された可能性がある。早稲水田から採取した系統を実験室条件で育てたところ、長日条件での開花はみられなかった。栄養条件などを検討する必要がある。晩稲水田では、湛水後の発芽も見られたが、湛水前より水路にアオウキクサが存在しており、そこから水田内に流入するものも多かった。収穫期の直前に一部の個体で開花・結実が確認されたが、多くの個体は開花しないままであった。これらは実験室条件において、短日下でも開花しなかったため、種子を作らずに越冬する常緑多年草と考えられる。現在、これらの系統の遺伝構造を調べるためにMIG-seqを計画している。 全国の30箇所から200系統以上のアオウキクサを採取した。これらはクローン増殖で維持されており、今後は限界日長測定、概日リズム測定を進める予定である。測定系の起ち上げが遅れていたが、装置の改良や実験条件の検討を通して安定して測定できるようになった。4集団の結果については、先んじて論文として投稿した。 昨年度に同定したFTホモログについて、シロイヌナズナの過剰発現変異体を作出し機能解析を行い、フロリゲン活性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概日リズム周期と限界日長の相関について、日本の4つの自然集団を対象とした結果をまとめ、論文として投稿できた。また、RNA-seq解析により同定したFTホモログについてフロリゲン活性を確認した。概日リズム周期と限界日長を結ぶ遺伝子を同定できたことは、今後の分子解析の指針となる重要な成果である。また、鹿児島の水田のフィールド調査からは、常緑の系統に加え、通年開花性の系統を発見した。これらの系統は、早稲と晩稲という水田環境に関連して分布している可能性があり、花成の局所適応を考える上で重要である。これらの系統も含めて、全国から集めた200系統以上のアオウキクサを収集しており、来年度の集団遺伝学解析への準備も進んでいる。以上のことから順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した200系統のアオウキクサに対して、概日リズム周期、限界日長の決定を進める。また、MIG-seqを実施し、集団遺伝構造を明らかとする。これらの情報を合わせて、限界日長の局所適応に、概日リズム周期の変化が関わるという仮説の検証を行う。
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Research Products
(6 results)