2021 Fiscal Year Annual Research Report
ドパミンニューロンが骨格筋の糖代謝に及ぼす調節作用に関する研究
Project/Area Number |
20J00258
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
上原(寺島) 優子 生理学研究所, 生体機能調節研究領域 生殖・内分泌系発達機構研究部門, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | たんぱく質代謝 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的]当該年度は、VMH(視床下部腹内側核)が、末梢組織におけるインスリンの作用によるアミノ酸取り込み及び、たんぱく質代謝回転の調節に関与しているかを検討した。 ① VMHの神経細胞の選択的刺激: SF1-creマウスを使用し、VMH-SF1ニューロン を選択的に刺激するため、SF1-CreマウスのVMHに、DREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drug)であるhM3Dq(活性型)をSF1ニューロンに選択的に発現させた。その後、同受容体の選択的活性化剤CNOをマウスに腹腔内注射し、SF1ニューロンの神経活動を選択的に活性化させた。コントロールマウスには、シグナリングの活性を示さないAAV-mCherryをVMH-SF1ニューロンに発現させた。 ② 末梢組織におけるたんぱく質及びアミノ酸代謝の測定- L-[14C(U)]-Phenylalanineの投与を併用した高インスリン-正常血糖クランプ法: VMH-SF1ニューロンをDREADD法により選択的に活性化させた状態で、クランプ試験を行なった。血中高インスリン濃度状態で、L-[14C(U)]-Phenylalanine及び、正常血糖値を維持するのに必要なグルコースを投与した。採血は10分ごとに行い、組織はクランプ終了時点(60分)に採取した [成果]①VMH―SF1ニューロンのシグナリング活性化により、クランプ中のインスリン注入量が増加し、インスリン感受性の亢進が観察された。さらに、ヒラメ筋でのたんぱく質分解が抑制された傾向がみられ、今後、マウスを増やし、さらに検討を深める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経活動操作法に一つであるDREADD法及び、今回新たな代謝測定方法である、たんぱく質代謝測定方法[L-[14C(U)]-Phenylalanineの投与を併用した高インスリン-正常血糖クランプ法]を確立できている。 さらに、VMH-SF1ニューロンをDREADD法による活性化した状態で、L-[14C(U)]-Phenylalanineの投与を併用した高インスリン-正常血糖クランプ法を実施した結果、末梢組織、特に骨格筋(ヒラメ筋)でのたんぱく質分解がコントロールマウスと比較し、抑制された。マウス数を増やして検討し、国内外の学会発表及び学術論文として発表していく方針である。 さらに、ドパミンニューロンと末梢組織のたんぱく質代謝の測定では、対象となる実験マウス、ウイルスベクター などは準備済みあり、脳の特定領域へのDREADD発現の手技についても習得済みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、VMH-SF1ニューロン の活性化により、末梢組織でのたんぱく質代謝に与える影響について実験を行なっている。ヒラメ筋でのたんぱく質分解が抑制されるなど、新たな知見が得られそうであり、さらにマウス数を増やして検討していく。 今後は、上記の実験に加え、腹側被蓋野 (VTA)及び、黒質緻密部(SNc)から投射されるドパミンニューロン と末梢組織でのたんぱく質代謝の関連について、検討する。 視床下部腹内側核 (VMH)には、ドパミン作動性ニューロンレセプターが存在していることが報告されていることから、まずは、VTA→VMHのドパミンニューロン を選択的に刺激または抑制するため、ドパミン作動性ニューロンcreマウスを用い、逆行性に関連するウイルスベクターによるDREADD法により、ドパミンニューロン シグナルを活性または抑制した状態で、L-[14C(U)]-Phenylalanineの投与を併用した高インスリン-正常血糖クランプ法を実施する。 さらに、オレキシンニューロンにはドパミンレセプターが発現しており、VMHにはオレキシンニューロンが存在していることから、シナプス末端から感染し、上流ニューロンにおいて作用タンパク質を発現するウイルスベクターをTH-Creマウス(またはDAT-Creマウス)のVMHまたはオレキシンニューロン近傍に感染させ、VMH、オレキシンニューロンに調節作用を及ぼすドパミンニューロンにhM3Dqを発現させ、CNOをSNcおよびVTAに投与し、L-[14C(U)]-Phenylalanineの投与を併用した高インスリン-正常血糖クランプ法を実施する。
|