2020 Fiscal Year Annual Research Report
天体衝撃波における高強度コヒーレント放射についての数値的研究
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20J00280
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩本 昌倫 九州大学, 総合理工学研究院, 特別研究員(PD) (00888810)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 無衝突衝撃波 / プラズマ不安定 / 粒子加速 / 高エネルギー天体 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、2次元系における電子・イオンプラズマ中の天体衝撃波の数値計算およびその結果の解析を行った。特にプラズマと高強度コヒーレント放射の非線形相互作用に注目し、粒子加速を重点的に調べた。シンクロトロンメーザー不安定により励起された高強度電磁波は衝撃波上流に伝搬し、誘導ラマン散乱及び誘導ブリルアン散乱を引き起こす。その結果誘導ラマン散乱により静電波が、誘導ブリルアン散乱による密度フィラメントが生じる。静電波で減速した粒子がうまく密度フィラメントに入ると、プラズマ流の対流電場に補足される。最終的には、相対論的効果により最高でプラズマ流のローレンツ因子の2乗まで電子・イオンともに効率的に加速されていくことを発見した。これを数値計算・理論計算の両面から実証しており、この成果はすでに国内外の学会で発表している。招待講演としても成果を国際学会で発表しており、国際的にも評価されている。 また、今年度はポーランド科学アカデミーのJacek Niemiec教授のグループとも協力して天体衝撃波の数値計算及び理論解析を行った。Jacek Niemiec教授は天体衝撃波の理論・数値計算に深い見識をもっており、本研究について建設的なコメントをいただいた。私からも彼らの研究に対して主に理論面な側面から協力し、数値計算の物理的解釈に貢献した。この研究はすでに読付き国際学術雑誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyから2本出版されており、国際的にも研究を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は3次元計算を行う予定であったが、大規模数値計算を行えるだけの計算資源を確保することができなかったため、予定を変更して2年目に行う予定だった粒子加速機構についての詳細な議論を行った。粒子加速機構の解明は予定通り進行しており、現在論文にまとめている段階にある。また、来年度に3次元計算を行うための準備もしており、最適な計算設定を従来の2次元計算から見積もった。 当初の研究計画から順序は前後したが、3次元計算を行う準備は整っており、また粒子加速機構の解明も果たせているため本課題を順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は3次元計算を実施する。この数値計算は膨大な計算資源を必要としスーパーコンピュータの利用が不可欠である。来年度は新たに代表者として申請した2021年度HPCI若手課題にすでに採択され名古屋大学の「不老」を本年度から引き続き利用でき、また2021年度国立天文台天文シミュレーションプロジェクトにも採択され国立天文台のXC50も利用できる。さらには「富岳」成果創出加速プログラムにも新たに参加しており、上述のスーパーコンピューターに加えて富岳も利用できる。大規模数値計算を実施することができるだけの環境をすでに整えており、今年度に実施できなかった3次元計算を行う目処がすでに立っている。 また、Jacek Niemiec教授のグループとの共同研究を継続することも決まっており、現在も定期的に議論を交わしている。ポーランド科学アカデミーが所有するスーパーコンピューター「Prometheus」の計算資源も利用可能となっており、より緊密な連携を予定している。
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Research Products
(11 results)