2021 Fiscal Year Annual Research Report
戦友会の世代交代をめぐるエスノグラフィー:戦争社会学の方法論的再構築へ向けて
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20J00313
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
清水 亮 筑波大学, 人文社会系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 戦争の記憶 / 戦争社会学 / 軍学校 / 戦争博物館 / 自衛隊 / 語り部 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦友会の事例研究については、引き続き新型コロナウィルスの影響により、インタビューや参与観察などの調査は困難であった。昨年度からの歴史社会学的研究の方向への転換を経て、文書資料や収集済みのインタビューデータなどをもとに研究成果を出すこととした。特筆すべきは、社会学的方法に基づく戦争研究の新たな展開を目指し、博士論文をもとにしつつ戦友会の世代交代に関する記述なども追記した単著『「予科練」戦友会の社会学──戦争の記憶のかたち』の出版である。戦友会との関係も着眼点の一つとして戦争体験者が語り部に“なる”プロセスを比較・考察した論文「戦争体験と「経験」」も執筆した。 「戦争社会学の方法論的再構築」については、昨年度中にすでに掲載決定済みであった論文「日本における軍事社会学の受容」で提出した、文化社会学的な傾向の強い戦争社会学に対し、教育社会学や産業社会学との交差、という研究課題について、論文「軍学校出身者の立身出世をめぐる自己確認」において、高橋三郎らの文化社会学的な戦友会研究と広田照幸・竹内洋らの教育社会学的な軍学校研究をを交差する視座にもとづく実証研究を実践した。また、基地研究への社会学的アプローチの開拓として論文「自衛隊基地と地域社会」を執筆し、旧軍から自衛隊へと、より現代的な展開をうかがっている。また、社会学的方法の導入による独自の戦争博物館研究として論文「公立戦争博物館における教育・観光の分業と兼業」を生み出した。 いずれの成果にも共有するのは、既存の定石的アプローチにとらわれず、これまでの導入されてこなかった意外な視座との交差を積極的に図ること。複数の事例の比較の重視。モノグラフ的な研究の可能性の追求である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦友会に関する対面的な調査は当初の計画よりも大幅に遅れているものの、既存のデータや他のアプローチを用いて、幅広い研究成果を創出し、「戦争社会学の方法論的再構築」という目標へ向けて大きく前進しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
戦友会については、上記の成果をアウトリーチし、評価・批判を踏まえつつ、3年間のとりまとめを図る。軍事基地や戦争博物館に関する社会学的方法に基づく研究を推進し、戦争社会学の方法論的再構築を具体的に実践したい。
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Research Products
(8 results)