2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J00337
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
今城 哉裕 東京女子医科大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | Tissue Engineering / 培養装置 / 超音波 / メカノトランスダクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的,目的達成のための手段,そして現在までの研究の実施状況を順番に示す. 本研究は,心臓の移植手術におけるドナー不足などの課題解決のための再生医療の治療を提案するため,生体外における立体心筋組織の生成を目的としている.生体外において立体組織を生成すると,組織の内部において細胞への栄養や酸素の供給が不足することなどから細胞死が発生してしまう.これを回避するためには生成した組織への血管の構築が必要である.このための手段として,超音波振動による血管新生の制御等を提案している.具体的には,細胞の回収時と培養時に超音波を用いることによって血管新生の促進を目指す.下記に,細胞の回収方法と培養方法に分けて研究の実施状況を報告する. 細胞回収時に,酵素を用いずに超音波を用いることでタンパク質リッチな細胞を回収することができるため,細胞の活性が向上する.このため血管新生の促進をはじめとして,細胞やこの細胞から生成した組織の機能性が向上すると考えられる.現在までに超音波による細胞の回収方法を開発し,回収に必要な条件や原理の検討,回収された細胞の活動の評価を行っている. 回収した細胞から立体組織を形成し,効果的に培養する際の方法論を研究している.現在までに立体組織を効率的に作成する方法と,作成した立体組織を効果的に培養する方法を開発してきた.さらに,作成した立体組織に対して効率的に超音波を照射するデバイスを開発した.また,平面培養した細胞に対して超音波を照射する実験系において単細胞の遊走を定量化する画像解析手法を確立した.今後は上記において開発した実験系を用いて血管新生の制御に資する超音波の条件を検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず,現在の進捗状況を述べて,自己点検による評価の理由とその原因について述べる. 現在までに,細胞の回収方法の確立,培養方法の確立,超音波の照射方法の確立の3つに分けて研究をおこなってきた.細胞の回収方法に関しては当初の計画以上に研究が進んでおり,細胞の剥離条件の定量化に関する研究も実施できている.培養方法についても,研究を進める中で当初の計画を超えて様々なアイディアを発想し,新たな細胞培養方法について研究をおこなっている. その一方で,超音波の照射方法に関して計画の変更と遅れが見られた.これは,感染症拡大を受けて当時予定していた海外でのデバイスの開発を断念したために,超音波の照射方法を大きく予定から変更したことに起因する.具体的には,MHz帯の表面弾性波を照射するデバイスを作成する予定をkHz帯の体積弾性波を用いるデバイスに変更した.この変更を受けて大きく研究が遅れてしまった.kHz帯の超音波という血管新生に対しての効果が証明されていない超音波をあえて選んで挑戦的な研究を実施したものの,目覚ましい成果は得られなかった.これは一つの重要な知見ではあるものの,血管新生の促進には効果的ではないと考え,MHz帯の体積弾性波を細胞に照射するデバイスを作製した.現在はこのデバイスの評価を実施している. 現在までの進捗を(3)やや遅れている.にした理由は,予想以上に進んでいる部分もある一方で,超音波照射による血管新生の促進の部分が遅れていることに起因する.主要な原因は感染症の流行によるものであり,これを受けてさらに挑戦的な研究にシフトしたことがもう一つの原因である.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞の回収方法の確立,培養方法の確立,超音波の照射方法の確立の3つに分けて方策を述べる. まず細胞の回収方法については,引き続き超音波による細胞回収方法を確立しつつ,それ以外の回収方法についても検討していき,細胞の種類に応じた回収方法を検討していく.特に血管内皮細胞は酵素フリーの回収が困難であるため,更なる細胞回収方法の検討が必要である. つぎに,培養方法の確立について述べる.血管新生を実現するには長期培養が必要であるため,長期間にわたって細胞組織を維持できる培養方法を確立する必要がある.現在主流であるソフトマテリアルを用いた方法に加えて,ハードマテリアルである金属を用いることでこれを実現すべく,デバイス設計を行う. 最後に,超音波照射方法の確立に関してのべる.【現在までの進捗状況】に記したように,現在までにkHz帯の体積弾性波を用いるデバイスを作製して条件の検討をおこなってきた.しかしながら,挑戦的な内容であり,期間内において目覚ましい成果が期待できなかったため,MHz帯の体積弾性波を細胞に照射するデバイスを作製した.さらに,kHz帯の超音波による血管新生の目覚ましい促進が見られなかったことから,超音波のなかで血管新生を制御する成分の検討を行うことを着想した.具体的には,MHz帯の体積弾性波を細胞に照射することで血管新生の促進を行いつつ,温度刺激が血管新生に与える影響も検討する.こうすることで血管新生促進のメカニズムを明らかにできる.さらに,血管新生に最適な細胞培養条件を明らかにすることにもつながり,本研究計画に回帰するものと考えている.
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Research Products
(8 results)