2020 Fiscal Year Annual Research Report
スピンカロリトロニクス新展開に向けた能動的熱エネルギー制御に関する研究
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20J00365
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
平井 孝昌 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | スピンカロリトロニクス / スピントロニクス / 磁気異方性 / スピン軌道相互作用 / 磁気弾性結合 / ロックインサーモグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
スピンカロリトロニクスは電子の持つ電荷自由度とスピン角運動量自由度を扱うスピントロニクス分野に熱という要素を融合させた学術分野であり、ここ十数年で急速に世界中で発展した研究領域として注目を集めている。本研究では、外場による物性制御を通し、スピンカロリトロニクス分野に不足している能動的な熱制御原理・機能を創出することを目標としている。 本年度では、磁性体における縦型磁気熱電効果である異方性磁気ペルチェ効果を対象に、応力ひずみを外場とした吸発熱制御を主軸とした研究を行った。フレキシブル基板上に製膜した磁性薄膜に一軸引張ひずみを印加/除荷し、周期変動電流を入力としたロックインサーモグラフィ測定を行うことで、異方性磁気ペルチェ効果による吸発熱の可逆的スイッチングを実証した(Appl. Phys. Lett.誌に掲載、同誌表紙に選定)。これは、スピンとひずみの結合:磁気弾性結合を介して磁性体の磁化が回転したことによる。また、吸発熱符号のみならず吸発熱強度もひずみ印加によって変調されることも同様の測定において見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異方性磁気ペルチェ効果は、従来のペルチェ効果では実現不可能な単一物質における局所加熱/冷却デバイスとしての応用が期待されている。ゆえに、本研究で初めて実証した異方性磁気ペルチェ効果の制御は、その機能性を大幅に拡張するものであると期待できる。また、吸発熱強度変調については磁気弾性効果からは説明できず、材料の電子状態または基板-材料界面の熱伝導の外場変調由来であることを示唆しており、スピンカロリトロニクス現象の非線形変調の実現にも期待できる成果となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に構築した測定系を拡張し、周期変動外場を入力源とした熱電/熱スピン変換現象の動的制御に取り組む。特に材料界面に着目した外場による物性制御を行うことで、バルク効果で予想されるよりも巨大な熱制御を目指す。当初の計画通り、スピン及び磁化に依存した熱輸送(熱伝導)現象の外場制御に関する研究も並行して着手する。
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