2020 Fiscal Year Annual Research Report
深成岩・鉱物単結晶を用いた長周期地球磁場強度変動の解明
Project/Area Number |
20J00400
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 千恵 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 古地磁気強度 / 長周期変動 / 斜長石単結晶 / 深成岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、主に過去1億3000万年間をターゲットとして長周期地球磁場変動を明らかにすることを目標に、深成岩から分離したケイ酸塩鉱物単結晶を用いた古地磁気強度推定を行っている。本年度は、山梨県道志村の複数地点で採取されたハンレイ岩試料(500万年前)から分離した斜長石試料の岩石磁気測定を行い、その結果から古地磁気測定に適するサイトの選別を行った。選定されたサイトの試料に対しては古地磁気強度実験の前段となる段階消磁実験および残留磁化異方性測定を行った。 道志ハンレイ岩試料は2019年にサンプリングを行った4サイトの試料と、協力者から譲り受けた1サイトの試料を用いた。試料は非磁性の道具を用いて砂粒大まで粉砕し、実体顕微鏡下で表面に汚れや割れ目のない斜長石粒子を選別したのち、塩酸処理により表面の細かな磁性粒子などを除去したものを測定に用いた。単結晶試料の古地磁気測定を固定座標系で行うため、無アルカリガラスの板に穴をあけた専用のホルダーを製作し、使用した。岩石磁気測定では熱磁気分析と磁気ヒステリシス測定を行い、試料に含まれる磁性鉱物の種類・組成・粒径を推定した。また、段階熱消磁および段階交流消磁を行い、地磁気記録の安定性を評価した。これらの結果から、5地点のうち3地点の試料は保磁力が低く古地磁気測定に適さないことが分かったため、残りの2地点の試料について古地磁気強度測定を行うこととした。段階交流消磁後の試料に対して非履歴性残留磁化を用いた異方性の測定を行い、古地磁気強度推定への影響を見積もった。また、当初の計画にはなかったが、西オーストラリア・ピルバラのハンレイ岩(先カンブリア時代・年代未決定)についても同様の測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、国内の4地域で試料採集を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で中止せざるを得なかったため、道志ハンレイ岩以外の試料は入手できておらず、達成度はやや遅れているといえる。代わりに、計画時には本課題で扱う予定ではなかったが、入手済みであった先カンブリア時代の試料の測定を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き道志ハンレイ岩の古地磁気強度・方位測定を行い、500万年前の平均的な地球磁場強度を推定する。古地磁気強度実験はShaw法(保磁力分布により磁化成分を分解する)とThellier法(ブロッキング温度分布により磁化成分を分解する)の2つの手法で行い、整合性を確認することで推定値の妥当性を検証する。他の年代の試料の野外サンプリングを行う予定であるが、実施が難しい場合に備え、試料を保有している研究者に連絡をとり、一部を譲っていただけないか交渉することも検討する。斜長石試料の顕微鏡観察を進め、岩石磁気パラメータとの相関関係を探る。
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