2020 Fiscal Year Annual Research Report
うつ・不安調節機構における脂肪組織の役割の解明-運動や肥満への適応に着目して-
Project/Area Number |
20J00439
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
冨賀 裕貴 佐賀大学, 附属病院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 運動 / 脂肪組織 / うつ・不安 / アディポカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,運動による脂肪組織の適応が全身の代謝を調節することが報告された.運動は肥満の改善,全身の代謝のみならず,うつ・不安といった気分の改善にも有効であることはよく知られている.しかしながら,うつ・不安調節機構において,運動や肥満に適応した脂肪組織がどのような役割を果たしているかについては未だ不明な点が多く残されている.本研究では,運動や肥満によるうつ・不安調節機構における脂肪組織の役割を明らかにすることを目的とした. 本年度は,ドナーマウスに対する運動負荷による脂肪組織の適応,またそれらの脂肪組織を移植したレシピエントマウスにおけるうつ・不安様行動に及ぼす影響や血中生化学項目を評価した.ドナーマウスを安静群と運動群に分類し,11日間,回転ホイール付きケージで飼育した.その後,偽手術群,安静群ドナーマウスの皮下白色脂肪(scWAT)移植群, 運動ドナーマウスの皮下脂肪移植群の3群に分類し,12日間の飼育後に屠殺した.運動脂肪移植群においては高架式十字迷路試験により評価した不安様行動,強制水泳試験により評価したうつ様行動の改善が認められた.運動によりscWATで発現が上昇し血中に分泌される候補アディポカインをELISA法で評価したところ,運動脂肪移植群においては血清アディポカインレベルの増加傾向が認められた.この血中アディポカイン濃度は,抗うつ行動の指標およびそれぞれのドナーマウスの走行距離と正相関していた.次に運動脂肪移植群の背側および腹側海馬において運動により応答する遺伝子群を評価したところ,いずれにおいても3群間で有意な変化は認められなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究実施計画では,運動トレーニングあるいは肥満モデルマウス由来脂肪組織を移植する動物モデルを作製し,うつ・不安に及ぼす影響を評価することであった.研究代表者の所属変更と緊急事態宣言の影響により,実験環境のセットアップおよび予備検討の実施に時間を要した.そのため当初の計画のうち,運動トレーニングモデルマウスの脂肪組織移植モデルの作製およびうつ・不安様行動の評価のみ実施するにとどまった.そのため,当初の計画よりやや遅れていると判断された.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の実験計画のうち,一部未遂行の計画を実施する予定である.具体的には,高脂肪食を負荷したマウスから採取した肥大化scWAT移植モデルの検討を実施する.また,2020年度に得られた運動脂肪移植の効果は,高脂肪食負荷による肥満動物においても効果を発揮するかどうかを確かめる. さらに2020年度結果から,当初の想定とは異なる経路を介している可能性が示唆された.そのため,運動脂肪が抗うつ・不安効果を発揮するシグナルの送信側(脂肪組織)だけでなく,受信側(海馬)における包括的な解析も視野に入れた検討をすすめる.
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