2020 Fiscal Year Annual Research Report
サブnmギャップを持つメタ表面の量子効果解明と機械学習による高機能化設計
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20J00449
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹内 嵩 筑波大学, 計算科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ナノ物質 / メタ表面 / 非線形光学応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属ナノ粒子を二次元的に周期配列したメタ表面は、ナノ粒子の幾何因子に応じた特異な光物性を発現する。特に近年、ナノ粒子間に1nm未満(サブnm)の距離(ギャップ)を持ったメタ表面を自己組織化により安定かつ大面積に作成可能になり、強い光との相互作用により高い非線形光学効果を発現できる点から注目されている。しかし、このようなサブnmスケールではトンネル電流に代表される量子力学的効果が顕著に現れ、光科学分野にて広く用いられている古典電磁気学計算が破綻する。そのため、サブnmギャップを持つメタ表面の発現する光物性については、一部の実験により氷山の一角が明らかにされたのみだった。 そこで本研究では、従来の古典電磁気学計算に量子力学的手法である第一原理計算を組み込んだ手法を用い、サブnmギャップを持つメタ表面の発現する光物性を明らかにすること、および量子力学的効果を積極的に活用した新奇な光機能の実証を目的としている。 研究の初年度である令和2年度では、直径3nmの金属ナノ粒子により構成されたメタ表面と強い光の相互作用を解析し、サブnmギャップの変化に対する非線形光学応答の依存性を調査した。結果、ギャップが0.6nm以上のメタ表面では、ナノ粒子間に生じる光増強により高い非線形光学効果が得られ、2019年に報告された実験系の先行研究の結果とも定性的に一致した。一方、これまでに議論のなかったギャップ0.6nm未満のメタ表面においては、上述の光増強に加え、トンネル電流やオーバーバリア電流に基づく電子輸送がギャップに生じ、さらなる高い非線形光学効果が得られた。この結果は、令和2年度中に学術論文として発表された。また、令和2年度後半では、ナノ粒子の粒径がより大きくなった場合を扱うべく、新たな計算手法の開発に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サブnmギャップにより生じる量子力学的効果が、メタ表面の非線形光学応答に及ぼす影響を解明し、その成果を学術論文として報告した。特にギャップ0.6nm未満のメタ表面では極めて高い非線形光学効果が得られることを実証でき、このような性質は光情報素子の小型化・高効率化などに役立つため、基礎科学面のみならず応用面においても重要である。また、本研究をきっかけに民間企業との共同研究を進め、令和2年度中に共同で特許出願を行った。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に用いた計算手法は、古典電磁気学計算に時間依存密度汎関数理論に基づく第一原理計算を組み込んだものだった。この手法では、第一原理計算における計算コストが大きいため、メタ表面を構成するナノ粒子の粒径を3nmに留めざるを得なかった。しかし、実用上で重要となるナノ粒子の粒径は数十~数百nmである。また、メタ表面の発現する光物性は粒径にも依存するため、このような差異の解消が必須である。したがって今後の研究の推進方策として、より粒径が大きいナノ粒子を扱えるような計算手法を新たに開発し、その上でサブnmギャップにより生じる量子効果が、粒径にどのように影響するかを明らかにする。
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Research Products
(7 results)