2020 Fiscal Year Annual Research Report
成人自閉症者における記憶のモニタリング機能の低下とその基盤となる脳内機構の解明
Project/Area Number |
20J00590
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 健太 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD) (00895542)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / エピソード記憶 / 記憶モニタリング / 成人期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,行動実験の仮説を立てるために,成人自閉スペクトラム症者が就労訓練をおこなう就労移行支援事業所での参与観察,児童精神科医とのカンファレンスを中心に研究活動を遂行した。また,研究成果の発表では,昨年度までに取得したデータの論文投稿や学会発表をおこなった。 就労移行支援事業所における参与観察では,成人自閉スペクトラム症者が日常で抱える問題の理解に努めた。例えば,「病院の予約のタイミングがわからない」といった意図の遂行エラーや他者の発言を遮って自身の発言を優先してしまうといった社会性の問題を観察した。このような問題は,障害特性に加えて経験した過去の出来事(記憶)を活用し行動修正ができないために生じているのではないかという仮説につながった。次年度からは日常記憶を実験的にコントロールし,仮説検証をおこなう予定である。 児童精神科医とのカンファレンスでは自閉スペクトラム症診断補助ツールの一つであるADOS-2(Autism Diagnostic Observation Schedule Second Edition)の陪席を中心に自閉スペクトラム症の評価について理解を深めた。半構造化面接法により自閉スペクトラム症特有の行動様式を評定する観点は就労移行支援事業所での参与観察の際にも大いに役立った。 論文投稿では,想像と現実の区別であるリアリティモニタリング(例えば,鍵をかけようと思っただけなのか,実際に鍵をかけたかの判別)に関する実験結果や感情調整に関する質問紙調査の結果を投稿し,現在査読中である。 学会発表では,感情調整と認知機能の関連や認知バイアスに関する研究を発表した。いずれの発表においても,研究成果をどのように臨床場面に応用できるのかといった視点で議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は新型コロナウィルスの影響でフィールドワークや実験に制限がかかり大幅にスタートが遅れた。しかしながら,可能な範囲でフィールドの新規開拓や児童精神科医との意見交換により自閉スペクトラム症の評価について理解を深めることができた。また,前年度までに取得したデータについて論文投稿や学会発表をおこない研究成果の公表に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度のフィールドワークで着想を得た研究仮説を具現化し,研究にスピード感をもって実際の研究課題へと結びつける。また,これまで同様,論文投稿や学会発表も継続しておこなう予定である。
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