2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J00598
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
荒川 創太 国立天文台, 科学研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 星団 / 氷 / ダスト / 原始太陽系星雲 / 微惑星 / 惑星形成 / 太陽系外縁天体 / 熱物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、原始太陽系星雲中での(微)惑星形成史を紐解くことである。特に、「太陽は星団中で誕生した」という点に着目し、原始太陽系星雲の物質分布の不均質の程度、ダスト成長、小天体の形成・熱進化といった問題に取り組む。本年度は以下の2つの研究を実施した。 1. 彗星表層の熱慣性の解釈:彗星表層(および内部)はダストアグリゲイトがゆるく積もった構造になっていると考えられている(階層粉体)。我々はこのような構造をもつ彗星において、観測されている熱慣性が反映しているのはアグリゲイトのどのスケールの構造なのか検討した。計算と観測の結果を比較し、自転周期での熱慣性は小さなアグリゲイト内部の熱物性を、公転周期での熱慣性はアグリゲイト間での輻射による熱輸送を反映していることがわかった。また、小さなアグリゲイトのサイズはcmないしdmサイズであると推定した。本研究の結果は Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 誌に発表した。 2. 氷ダスト粒子の付着特性:ダスト粒子の限界付着速度を見積もる際、しばしば表面エネルギーに由来する付着力を考慮した弾性球の接触理論(JKR理論)が用いられている。我々は、水氷およびドライアイスの微粒子に関する低速での衝突付着実験の結果について再解釈を行い、ドライアイス微粒子については JKR理論で実験結果をおおよそ説明できる一方、水氷の微粒子については(おそらく粘性的な)追加のエネルギー散逸機構が必要であることを示した。本研究の結果は The Astrophysical Journal 誌に発表した。 その他、ダストアグリゲイト間の付着状態に関する研究、氷のレオロジーを考慮した太陽系外縁天体衛星系の潮汐軌道・熱進化の研究にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、彗星の内部構造について我々の熱物性理論モデルを用いて議論した。また、ダスト粒子・アグリゲイトの付着特性についてもそれぞれ再検討を行い、今後の数値シミュレーションにおいて何を新たに考慮すべきか明らかになった。外縁天体衛星系の潮汐進化についても数値計算は完了し、現在論文を執筆している段階である。星団形成・進化と太陽系の起源に関する研究については本年度から研究打ち合わせを行っており、来年度から本格的に着手する準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
星団形成・進化と太陽系の起源に関する研究について、短寿命核種などの注入量およびそのタイミングを、まずは準解析的に調べる予定である。太陽系において隕石等の化学分析から得られている制約を満たすことができるのは太陽がどのような星団中で誕生した場合なのか議論したい。 また、ダストアグリゲイトの衝突数値シミュレーションにも取り組む予定である。特に、粘性的なエネルギー散逸を粒子間相互作用モデルに追加し、この効果が入っていない従来の数値シミュレーションと結果がどう変わるのか明らかにしたい。また、室内実験と数値計算の結果を比較することで、ダスト粒子のエネルギー散逸機構についてより良い理解が得られると期待している。
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Research Products
(13 results)