2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J00606
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| Research Institution | Ritsumeikan University |
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Principal Investigator |
小林 勇輝 立命館大学, OIC総合研究機構, 特別研究員(PD)
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2020-04-24 – 2023-03-31
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| Keywords | 明度知覚 / 錯視 / 心理物理学 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
明度（物体表面の白黒濃淡）の知覚と，高次処理の関連性を明らかにすることが本研究の目的である。
昨年度までの研究で，画像を逆さにすることで明度が変化して知覚される錯視現象を発見し，この錯視が「光は上からやってくる」という観察者内部の思い込み（仮定）によるものである可能性を検証してきた。これまでの研究でもこの可能性は支持され，まったく照明環境の情報のない画像に対しても，画像中の三次元情報と観察者の仮定のみによって錯視が引き起こされることが示されてきた。ところが，それと同時に，完全に二次元情報しか含まない画像においても類似の錯視が起こることが示唆され，倒立による明度錯視が「三次元情報に依存した高次処理」と「二次元情報のみに依存した低次処理」の両方によって引き起こされている可能性が示された。
本年度は，倒立錯視の構造を明らかにすべく，オンライン実験を中心に複数の知覚実験を実施した。これらの中で，「画像の二次元情報にほぼ変化がなくとも，三次元的情報の変化によって倒立錯視が起こること」と，「三次元情報を一切含まない画像であっても，画像中に含まれる二次元的な低次情報のみによって倒立錯視が起こること」が示された。すなわち，当初想定した通り，倒立錯視は高次処理と低次処理両方に依存していたということが明らかとなった。前者の知見はこれまでの研究への解釈を改めて裏付けるものである。後者の知見は，これまでの研究の中でも論じられてこなかった新規性の高い知見であり，この生起機序は不明な点が多い。光源位置の仮定とは無関係に起こる明度知覚の上下非対称性として，より一層の議論が求められるところである。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明度知覚と高次処理の関連を示すものと考えてきた倒立錯視が，低次処理にも大きく依存していたという本年度の示唆は，やや想定とは異なったものであった。高次処理との関連を積極的に示すものではないが，高次処理の寄与度を明らかにするうえでは重要な知見である。倒立錯視が高次処理と低次処理の複合であること，そして二次元情報のみにおいてもわれわれが明度処理の上下非対称性を有していることはこれまで明らかになってこなかった新たな知見であるため，大きな成果であると言える。これらのことを勘案し，本年度の成果を(2)とした。
また，本年度はグラデーションが生む明度錯視と照明の推定の関係を示唆した研究を出版した。これは高次処理と明度の関連の示唆として重要な成果であると言える。
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| Strategy for Future Research Activity |
次年度は，倒立錯視の生起機序について共同研究者らと議論を行い，論文投稿を行う。必要と見られれば，追加の実験を行う。また，明度知覚と高次処理の関連を明らかにするため，これまでとは異なる視点として，知覚的群化と明度知覚の関連について研究を行っていく計画である。知覚的群化と明度知覚の関連についてはこれまでにも多くの研究によってその関連が指摘されてきたが，群化という概念の曖昧性が故に，いまだ不明な点も多い。本研究は群化知覚研究の知見も取り入れ，群化という高次処理と明度知覚の関連について調べていく。
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