2022 Fiscal Year Annual Research Report
第二次世界大戦後のケニアにおける越境性動物疾病対策と国家統治の変容
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20J00738
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楠 和樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ / 国家 / 統治性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ケニアの牛疫対策を事例として越境性動物疾病対策が策定され、実施される過程を分析することである。 最終年度に当たる令和4年度は、前年度までに収集した歴史資料の整理と分析をおこなうとともに、ケニアで現地調査を実施した。現地調査では、これまでフィールドとしてきたカジァド・カウンティにおいて、牧畜民のマサイを対象として過去の牛疫の流行時の経験について聞き取り調査をおこなった。牛疫はもっとも危険な動物感染症のひとつであり、ヨーロッパ諸国では18世紀以降大規模な流行が繰り返されていたものの、獣医師の養成や国際会議の開催などの対応が整備された結果、20世紀初頭までにはほぼ撲滅されていた。それに対して、ケニアをふくむアフリカの国々に牛疫のウイルスが到来した時期は比較的遅く、その制圧にもより多くの時間がかかった。牛疫はケニアで19世紀末からたびたび発生し、2001年に最後の事例が報告されるまで、とくに家畜への依存度の高い生活を送っていた牧畜民に深刻な被害をもたらしていた。行政資料の分析によって、マサイは当初ワクチン接種などの国家による介入に対して非協力的な態度をとったことが分かった。これは、当時のワクチンの精度の問題にも起因している。度重なる感染症の流行によって家畜に甚大な被害が及ぶにつれて、彼らは徐々に近代的な対策を受け入れるようになったこと、それにともなって在来の対策実践にも変化が生じたことが聞き取り調査によって明らかになった。 以上の研究の成果の一部は、9月に開催された研究会で発表をおこなった。また、令和4年度中に刊行することはできなかったものの、論文2本(採録決定済)とワーキングペーパー1本を執筆した。
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Research Progress Status |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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